この記事の結論:賃貸物件で孤独死が疑われるときは、室内に入る前に警察へ連絡し、現場の物に触れずに、親族・連帯保証人・保証会社・保険会社へ連絡する、という順に進めます。発見後は、業者による初動処置(初期消毒、消臭剤の噴霧、臭気が広がらないようにする目張り)を早く行うことが、その後の作業量と近隣への影響を左右します。そのうえで、特殊清掃業者に依頼する前に、作業の範囲(脱臭や臭気測定まで含むか)、共用部の養生、見積りの内訳、保険の扱いを確認しておくと、あとからのトラブルを防げます。告知の要否は、国土交通省のガイドラインで整理されていますが、個別の判断が必要です。
この記事は、現場で多くの管理会社・オーナー様のご相談を受けてきた立場から、初動と、業者への確認事項をまとめたものです。法的な判断や、費用の負担の最終的な整理は、弁護士などの専門家にご確認ください。
目次
発見直後の初動
状況によって異なりますが、一般的には、次の順に進めます。
- 異変に気づいたら、室内に入る前に、警察(110番)へ連絡する。人が生きている可能性がある場合は、119番へ連絡する
- 遺体や室内の物に触れず、動かさない(警察の確認のため)
- 警察の対応が終わったあと、遺体の引き取りは、親族や葬儀社が行う
- 親族、連帯保証人、緊急連絡先、家賃保証会社、保険会社へ連絡する
- 近隣の方への対応を決める(臭気や立入りがある場合。説明は事実の範囲にとどめ、個人情報に配慮する)
- 体液に触れないよう、室内には必要以上に立ち入らない。害虫が発生していることもある
- 特殊清掃業者に連絡し、現地調査と初動処置を依頼する(早いほど、臭気の広がりを抑えやすくなります)
保険の加入状況は、作業の前に確認してください。保険会社によっては、作業前の連絡や承認が必要なことがあります(孤独死保険で特殊清掃費用を請求するには)。
初動処置が、その後を左右する|初期消毒・消臭剤の噴霧・目張り

当社が、最も大切にしている工程の1つが、現場に入って最初に行う初動処置です。初動が遅れるほど、臭気が広がり、害虫が侵入し、その後の作業が大きくなります。
初期消毒と、消臭剤の噴霧
体液や汚れのある箇所に、初期消毒を行い、消臭剤を使います。感染や害虫のリスク、臭気を、まず抑えるための処置です。
- 部屋の中:液状の消臭剤を噴霧します。
- 体液の跡:粉状の消臭剤を使います。
臭気が広がらないようにする目張り
においが室外に広がらないよう、漏れや侵入の経路を、養生テープなどで目張りしてふさぎます。
- 玄関ドアの郵便受け(ポスト)
- 換気扇の換気口
- 警察が入室するときに割られた窓ガラス
- その他の隙間(窓まわり、配管まわりなど)
これらは、臭気が近隣に広がる経路であると同時に、夏場は、ハエが侵入する経路にもなります(夏場のハエの発生と費用)。

警察が入室するときに割った窓ガラス
警察が入室する際に、窓ガラスが割られていることがあります。割れたままだと、臭気やハエの出入りに加え、雨風や防犯の面でも問題が生じます。業者が、マスカー(テープ付きの養生用シート)やプラスチックベニヤ(プラスチック製の養生板)で、仮の養生を行います。ガラスの修理にも対応できます。費用の負担は、契約や保険、状況によって異なります。
管理会社・オーナー様ができること
- 警察の対応が終わったら、室内に入らず、早めに特殊清掃業者へ連絡する
- 窓ガラスの破損、玄関の状況、近隣への臭気の有無を、業者に伝える。ガラスの修理も、業者に相談できる
- 業者に、初動処置をいつ行えるかを確認する
初動処置は、臭気の拡散や害虫の侵入を抑える応急的な処置です。においの根本的な除去には、そのあとの洗浄・脱臭・床下の確認などの作業が必要です(臭いが残る原因)。
特殊清掃業者に依頼する前の確認リスト
| 確認すること | なぜ確認するか |
|---|---|
| 初動処置:初期消毒・消臭剤の噴霧・目張りを、いつ行うか | 発見から時間が経つほど、臭気の拡散や害虫の侵入が進むため |
| 作業の範囲:洗浄・脱臭・測定まで含むか | 片付け中心の作業では、臭いが残ることがあるため(片付けと特殊清掃の違い) |
| 臭気測定:作業の前後に数値を確認するか | 作業の結果を、数値で確認できるため(臭気測定の数値の見方) |
| 床下・床材の確認:どこまで確認するか | 床板の裏、根太、床下に体液が届いていると、においが戻ることがあるため(臭いが残る原因) |
| 共用部の養生:誰が、どの範囲で行うか | 搬出時に共用部が汚れたり、臭気が広がったりするのを防ぐため |
| 見積書:作業項目ごとの内訳があるか | 費用の根拠を確認でき、保険会社や関係者への説明にも使えるため |
| 追加費用:事前に説明と了承があるか | 作業中に想定外の汚染が見つかることがあるため |
| 保険:加入の確認、指定の業者の有無、必要な書類 | 保険会社によって、手続きや業者の選び方が異なるため |
| 搬出の時間帯・車両・近隣への配慮 | 近隣の方への影響を、抑えるため |
| 遺品の扱い:誰の同意で、何を処分するか | 遺品は相続人の財産であるため、無断で処分するとトラブルになることがあるため |
| 作業後に臭いが残った場合の対応 | 再対応の可否を、事前に確認しておくため |
共用部の養生は、作業の前に取り決めておく
体液や臭いのついた遺品を搬出するとき、共用部(廊下、階段、エレベーターなど)に養生がないと、汚れや臭気が広がり、近隣の方からの苦情につながることがあります。実際に、共用部の養生が行われないまま搬出が始まった現場で、当社が養生を施したことがあります。
養生は、一般には、搬出を行う業者が行うものですが、事前の取り決めがないと、行われないことがあります。管理会社・オーナー様から、業者に、養生の担当・範囲・費用・養生材の処分を、作業の前に確認し、見積書や作業計画に書面で残しておくと、行き違いを防げます。
費用は、誰が負担するのか
特殊清掃の費用の負担は、一律には決まりません。次のような事情で変わります。
- 賃貸借契約の内容(原状回復の範囲、特約など)
- 連帯保証人の有無と、保証の範囲
- 相続の状況(相続人の有無、相続放棄をしたかどうか)
- 家賃保証会社や、孤独死保険などの加入状況
相続人と連絡が取れない場合や、近隣への臭気で早急な対応が必要な場合は、管理会社・オーナー様が、一時的に費用を立て替えることもあります。その場合は、領収書や見積書、作業の記録を残し、あとから精算できるようにしておくことが大切です。
詳しい考え方は、特殊清掃の費用が払えないときの対処法、孤独死保険の解説ページでも解説しています。法的な整理は、弁護士などの専門家にご相談ください。
告知について(国土交通省のガイドライン)
賃貸物件で人が亡くなったあとの、次の入居者への告知については、国土交通省が「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」(令和3年10月)で、考え方を整理しています(国土交通省の発表資料)。居住用の不動産が対象で、法令ではなく、告知の判断の目安として使われています。
- 自然死や、日常生活の中での不慮の死(転倒、入浴中の溺死など)は、原則として告知の必要はないとされています。
- ただし、孤独死などで発見が遅れ、特殊清掃や大規模なリフォームなどが行われた場合は、賃貸では、概ね3年間は告知が必要とされています。
- 借主から直接問われた場合や、社会的な影響が大きい場合は、期間にかかわらず、告知が必要になることがあります。
告知の判断は、個別の事情で変わります。事実を伝えないという対応は避け、不動産会社や弁護士に相談しながら進めてください。
実例|管理会社・オーナー様が確認した点
- 石岡市の集合住宅(2DK):孤独死保険を適用し、見積書・作業前後の写真・報告書を、保険会社への請求に用意しました。畳の新調と、土間のバイオ脱臭を含め、総額は786,500円(税込)でした(石岡市の特殊清掃事例)。
- 水戸市:全体を解体せず、汚れた建材のみを撤去し、部分リフォームで対応しました。臭気測定で、4か所すべてで数値を確認しています(水戸市の特殊清掃事例)。
原状回復の範囲は、床下まで確認し、臭気を測定したうえで判断します。費用と日数の関係は、発見までの日数と特殊清掃費用で解説しています。
管理会社・オーナー様が、事前にできる備え
- 緊急連絡先と、連帯保証人の情報を、定期的に更新する
- 孤独死保険や、家賃保証会社の付帯補償の内容を確認し、業者を選べる契約かも把握する
- 安否確認の仕組み(見守りサービス、定期的な連絡など)を検討する
- 孤独死が起きたときの連絡先・手順を、管理会社と共有しておく
賃貸で孤独死が起きたときのよくある質問
管理会社が、先に室内に入ってもよいですか?
孤独死が疑われる場合は、室内に入る前に、警察へ連絡してください。警察の確認が終わるまでは、遺体や室内の物に触れず、動かさないようにしてください。
警察が入室するときに割った窓ガラスは、どうすればよいですか?
割れたままだと、臭気やハエの出入り、雨風、防犯の面で問題が生じます。特殊清掃業者に、仮の養生(マスカーやプラスチックベニヤ)を依頼してください。ガラスの修理も、業者に相談できます。費用の負担は、契約や保険、状況によって異なります。
発見から、どのくらいで初動処置をするべきですか?
早いほど、臭気の広がりや害虫の侵入を抑えやすくなります。警察の対応が終わったら、できるだけ早く、特殊清掃業者に連絡し、初動処置の日程を確認してください。
費用を立て替えたら、あとで請求できますか?
賃貸借契約の内容、連帯保証人、相続の状況によって異なります。立て替えた費用は、領収書や見積書、作業の記録を残し、必要に応じて弁護士などの専門家にご相談ください。
遺品は、管理会社やオーナー様の判断で処分してよいですか?
遺品は相続人の財産です。無断で処分すると、トラブルになることがあります。相続人の意向を確認し、必要に応じて、専門家にご相談ください。遺品整理についてのご案内は、遺品整理のページをご覧ください。
次の入居者への告知は、いつまで必要ですか?
国土交通省のガイドラインでは、自然死でも、特殊清掃などが行われた場合は、賃貸では概ね3年間は告知が必要とされています。個別の判断が必要なため、不動産会社や弁護士にご確認ください。
近隣の方には、どう説明すればよいですか?
臭気や立入りで、ご迷惑をおかけする点を、事実の範囲でお伝えします。故人様やご遺族様の個人情報には配慮してください。説明の内容は、管理会社・業者とあらかじめ相談しておくと安心です。
共用部まで汚れてしまった場合は、どうなりますか?
汚れや臭気が共用部に及んだ場合は、共用部の清掃や脱臭が必要になることがあります。搬出の前に、養生の担当と範囲を取り決めておくと、防ぎやすくなります。
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※本記事は、一般的な情報の提供を目的としています。法的な判断、費用の負担、告知の要否、保険の適用は、個別の事情や契約内容によって異なります。当社は法律・保険の専門家ではありません。最終的な判断は、弁護士・不動産会社・保険会社などの専門家にご確認ください。
