愛犬が命懸けで知らせた孤独死の7日間

2018/10/20

孤独死を発見してもらうために!自分のいのちを犠牲に犬が吠え続けた7日間

みなさんこんにちは。今回は、若い男性が孤独死し、飼っていた愛犬(キャバリア)が主人の死を近所に知らせようとした7日間についてお伝えします。結局、その鳴き声は誰にも届くことなく、故人と愛犬の命は同じ部屋で尽きてしまいました。

なお、実際の愛犬の画像を記事の最後に掲載しています。閲覧の際はご注意ください。

それでは、しばしお付き合いください。

結論

近隣の方が通報しなかった理由は、「第一発見者になりたくなかった」というものでした。

平和な現代の日本でこれからも生きていくためには、たとえ他人であっても関心を持つこと、そしてペットが発する小さなSOSに気づける感覚を、私たちは取り戻す必要があるのではないでしょうか。見守り活動や防止団体の取り組みも、自己満足で終わらせず、現場の実情を正しく把握し続けることが求められると思います。

孤独死が起きてしまった原因

今回の孤独死が起きてしまった経緯についてお伝えします。

亡くなったのは20代前半の男性でした。父親によれば、頑固な一面はあったものの、他人にきちんと挨拶ができ、ペットを大切にする優しい人柄だったといいます。

一人暮らしをしていた息子さんの死因は「急性の心臓死」でした。

突然死(予期せぬ死、急死、頓死) 瞬間死あるいは急性症状の発現後24時間以内の死亡で、外因死を除いた自然死のことをいいます。 東京都福祉保健局の資料より

予期せぬ前兆はあったのか

亡くなる2週間ほど前、故人は実家に3日ほど帰省していました。そのとき、ご飯はきちんと食べているか、生活はきちんとできているか、仕事は続いているかといった会話が交わされたそうです。

会話の中で、顔色の悪さや体調の異変が目立つ様子はなく、いつも通りに過ごしているように見えたといいます。ただ、ヘビースモーカーで、お酒もよく飲む方だったため、その点は少し気がかりだったそうです。

後になって振り返ると、お盆や正月でもないのにふらりと実家に帰ってきたことが、今思えば不思議だった。父親はそう話していました。普段あまり帰らない人がふと帰ってくるというのは、何かの知らせだったのかもしれません。

部屋の中はどんな様子だったのか

部屋の中は、独身男性の一人暮らしという雰囲気でしたが、以前女性と同棲していた形跡があり、女性用と思われる家電や衣類、化粧品なども見受けられました。

直近の使用状況からすると、すでに一緒には暮らしていなかったようですが、愛犬をとても可愛がっていた様子で、おもちゃやおやつが部屋のあちこちに散らばっていました。

急な死であったこともあり、生活感がそのまま残ったような時間が止まった空間に、故人は静かに横たわっていました。ベッドのそばには処方薬らしきものがありましたが、詳細は分かりませんでした。

電気はついたままで、水道も止まっていません。使う人がいなくなっただけの空間が、そこにはありました。

ベッドの脇とテーブルの上の灰皿には収まりきらないほどの吸い殻があり、床にまで落ちているものもありました。壁紙はヤニで真っ黄色になっており、日々かなりの本数を吸っていたことがうかがえました。

ネット通販をよく利用していたようで、部屋には空き箱や開封していない段ボールが積まれたままになっており、その中にはドッグフードも入っていました。

どうやって発見されたのか

死後およそ1週間で発見されましたが、遺体の腐敗はすでに進んでいました。上階に住む大家さんのもとに、犬の鳴き声についての苦情が近隣から寄せられ、様子を見に行っても応答がなかったといいます。

異臭に気づいたことで警察へ連絡し、一緒に室内へ入ることになりました。

部屋の中では、すでに腐敗が進んだ故人がベッドの上で息を引き取っており、虫が室内を飛び回っていました。部屋が荒らされた様子や物が持ち去られた形跡はなく、ただ静かに、人の遺体がベッドに横たわっているだけでした。臭いはドッグフードや排泄物、腐敗臭が入り混じったもので、マスクをして入室した方がすぐに嘔吐してしまうほど強烈でした。

故人の遺体は警察の手によって搬送され、部屋に残されたのは「愛犬の遺体」でした。ペットは法律上「物」として扱われるため、故人の遺体とともに搬送されることはありません。

最後まで主人と生活をともにし、そして一緒に遺体となって発見された小さな命。最後の瞬間まで、懸命に生き抜こうとしていたようでした。

虫の知らせではなく、犬の知らせだった

故人が急に亡くなったことを知らせようと、愛犬はその小さな体で懸命に吠え続けていたそうです。

作業中、隣人の方が様子を伺いに来て話を聞くと、犬がずっと吠えていたので「うるさいな」と感じていたといいます。いつもはそんなに長く吠えることはなかったそうですが、愛犬は4〜5日ほど吠え続けていました。

それでも特に不審に思うことなく普段通りの生活を続け、5〜6日ほど経つと鳴き声も聞こえなくなったといいます。

その愛犬は、わずかに残った食料で自分の命をつなぎながら、亡くなった主人の異変を隣人に伝えようと吠え続け、やがて食料も尽き、体力の限界を迎えて命を落としていきました。

もし苦情が寄せられていなければ、発見はさらに遅れていたかもしれません。

普段と違う吠え方をしていたのに、異臭にも気づいていたのに、なぜ隣人は何もしなかったのか「第一発見者になりたくなかった」

それが、隣人が語った言葉でした。異臭も、尋常ではない鳴き方も分かっていながら、自分が第一発見者になりたくないという思いから、通報すらしなかったのです。

結局、大家さんに苦情の連絡を入れたのは、別の階に住む住人でした。

その隣人は、犬が鳴き続けていた頃、引っ越しの準備を進め、そのまま引っ越してしまったといいます。

小さな犬の体は、亡くなった主人の部屋で、壁の方を向いたまま息絶えていました。動かなくなった主人を見て、誰かに知らせようとしたのでしょう。けれど、誰も気づいてはくれませんでした。吠え続ける体力も限界を迎え、愛犬の「気づいてほしい」という願いは、最後まで届くことはありませんでした。

人は気づかなければいけない、大切なことに

人が部屋の中で誰にも看取られずに亡くなること自体は、決して多くはないにせよ、昔から存在していたことだと思います。しかし、これほどまでに人が人を思いやれなくなってしまうことは、あってはならないのではないでしょうか。

弱者を守ろうという声が叫ばれる一方で、故人が亡くなっていることに気づいていながら、そのまま引っ越してしまう人がいる。自分さえよければという空気の中で、連絡することさえしない。そんな現実があります。

物に囲まれ、不自由なく暮らせるようになった世の中で、私たちが陥ってしまった一種の「平和ボケ」。普段と違う鳴き方に気づいたなら、連絡をするだけでよかったはずです。

人も犬も亡くなり、漂う腐敗臭、そして遺体に湧いた虫。孤独死を防ごうと、一部の方々が見守り活動を続けてくださっていますが、本当に大切なのは「社会全体が孤独死に関心を持つこと」です。それができなければ、見守り活動そのものも十分な意味を持ちません。

見守りの目が届いていない場所では、「第一発見者になりたくない」という理由だけで、発見が遅れてしまうケースが今も存在しています。

動物が発してくれた気づきに、人間が応えられなければなりません。何よりも大切なのは、早期に気づき、動くこと。それができていれば、助かった命もあったはずです。

父親が見せた落胆の姿

部屋を訪れた父親は、しばらく部屋を見渡したまま、一歩も動くことができずにいました。「お願いします」とだけ告げ、玄関わきで作業の様子をそっと見守っていました。時折、思い出の品が見つかると、言葉もなくカバンに詰めていきました。

犬の遺体を目にしたとき、すでに動かなくなった犬の頭を「よく頑張ったね」と言いながら、そっと撫でていました。

故人の写真が出てきたときには、いつ撮られたものかを思い出すように、じっと見つめていました。

作業が進み、清掃が終盤に差し掛かった頃、何もなくなった部屋を見て、父親は静かに涙を流していました。かけるべき言葉も見つからないまま、私たちはただ缶コーヒーを一本、父親に手渡しました。

「もう、何も考えられません」絞り出すように発せられたその言葉が、今も印象に残っています。

作業が終わり、お別れの際、「あなたたちはこういう風にはならないでね」と、ご自身がつらいはずなのに、私たちのことを気遣ってくださいました。そのことは、決して忘れてはならないと思っています。

別れ際に見せた涙は、私たちスタッフの心にも深く残る瞬間でした。

最後に、愛犬の実際の画像について(閲覧注意)

主人の最後を懸命に知らせようとした愛犬は、私たちが火葬し、合同墓地に埋葬させていただきました。主人とは一緒に埋葬することはできませんでしたが、本当によく頑張ったこのキャバリアは、人間以上の心を持っていたのではないかと思います。

孤独死した主人を必死に近所へ知らせようとして体力を使い切った犬の様子

関連記事