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【ふとんのシミと食べかけの夕飯】孤独死のあった部屋から見る教訓。ミニチュアはその人の過ごしてきた人生を物語る

今回のご依頼の経緯
ご遺体が見つかったのは、布団の上でした。発見までにおよそ1ヶ月が経過していたといいます。娘さんは月に一度、電話で父親の無事を確認していました。ただ、電話口の父親はいつも早々に会話を切り上げてしまう人だったため、実際にどんな暮らしをしていたのかまでは知る由もなかったそうです。
「月に一度は連絡を取り合っているから、うちは大丈夫」そう思っていた矢先に、娘さんはご自身が孤独死の当事者家族になってしまったと振り返っていました。
過去の制作事例はこちらもあわせてご覧ください:孤独死のあった部屋のミニチュア作品一覧/特殊清掃サービスについて
制作期間3ヶ月。故人の部屋を再現するということ
今回のミニチュア制作には約3ヶ月を要しました。仕事の合間を縫って一つひとつパーツを組み上げ、当時の部屋の空気をできる限り忠実に再現することを心がけています。材料はホームセンターで調達し、木材を細かく切ったり削ったりしながら形にしていきました。

部屋に残されていたもの、趣味は競馬
部屋の中は物が雑然と散らかっていました。故人の趣味は競馬だったようで、壁には気に入っていた馬のカレンダーの切り抜きが貼られ、見事的中した馬券も大切に保管されていました。
テーブルの上には競馬新聞や専門誌が広げられたまま。次のレース予想にワクワクしていた様子がうかがえます。クロスワードや新聞も残されており、生活そのものに困窮していた形跡は見当たりませんでした。

娘さんへ遺されたメッセージ
孤独死の現場には、生前に本人が書き残した言葉が見つかることが少なくありません。今回のお部屋は、実は私たちスタッフが訪れるのが2度目でした。1度目は約1年前、生前整理(終活)のご相談で伺っていたのです。
その時は体調を崩している様子もなく、娘さんの存在についても伺っていました。「自分が死んだら、御社に頼むように言っておく」そう話していたのを覚えています。「まだまだ先の話ですから、人生を楽しんでください」とお伝えしてお別れしたのですが、2度目の訪問は、まさかの孤独死の現場となってしまいました。

娘さんから連絡を受けて部屋に入ると、そこにはレトルト食品で食事を済ませていた日々の暮らしが色濃く残っていました。警察からは娘さんご本人は部屋に入らないよう指示があり、片付けは私たち業者だけで行うことになりました。
台所には洗われないままの食器、掃除が行き届かず埃の積もった箇所もありました。貴重品や書類を探すなかで、タンスの上の仏壇の脇に、直筆のメッセージを見つけました。「娘に渡してください」そう記されていました。そばには「遺書」と書かれた封筒も。娘さんに手渡すと、涙を流しながら読んでいらっしゃいました。一緒に置かれていたのは、遺書と生命保険の書類でした。




5年前と今とでは、孤独死の「かたち」が変わってきている
孤独死というと、コミュニケーションを絶った高齢者が誰にも看取られずに亡くなるイメージを持たれがちです。しかし実際には、周囲との関わりがなかったから孤独死する、という単純な話ではなくなってきています。
月に一度連絡を取り合っていても、近所付き合いがあっても、発見までに1週間という時間はあっという間に過ぎてしまいます。孤独死を防ぐことを家族だけの努力に委ねるのには、どうしても限界があるのです。
実際に近隣の方に話を伺うと、「なんとなく異臭がして、もしかしたらと思った」という声をよく耳にします。同時に「自分が死ぬときも、ああいう最期でいい」という声も少なくありません。家族が気をつけていても、近隣の関心が薄れていけば、孤独死そのものを減らすことは難しくなります。発見が早いに越したことはないと願う一方で、人が人へ向ける関心は、以前より薄れてきているように感じます。
ミニチュアだけでは伝えきれないこと
孤独死は、遺されたご家族にとってあまりに突然の出来事です。どう対応すればよいかわからないまま、時間だけが過ぎていきます。大家さんにとっても同様で、経験のないケースに直面すれば戸惑うのは当然です。立場は違えど、どちらも当事者であることに変わりはありません。
- ご遺族にとっては、身内を孤独死という形で亡くした深い悲しみ
- 大家さんにとっては、物件の損傷という現実的な心配
私たちは両方の立場に寄り添いながら、孤独死のあった部屋をミニチュアという形で社会に伝えようとしています。ただ、1作品を仕上げるのに数ヶ月かかるうえ、この活動はブログなどを通じて知っていただかなければ、存在すら認知されません。SNSなどで少しでも多くの方に広めていただくことが、孤独死の早期発見や、遺族の思い、大家さんの苦悩を伝える力になると考えています。

生きている私たちにも、できることがある
孤独死をする人は社会から孤立している、そう思われがちですが、実際には孤立していなかった人も数多くいるという事実を、知っておいていただきたいのです。
近隣の方に話を聞くと、多くの場合、故人の日々の暮らしぶりを何となく把握しています。「昨日どこそこへ出かける挨拶をしていた」「玄関のドアの音や足音が聞こえていた」など、普段の生活は意外と周囲に見られているものです。もし2〜3日、いつもの物音が聞こえなくなったら、少し気にかけてみてください。
新聞が何日分も溜まるポストはそう多くありません。そして孤独死における腐敗臭は、日常で嗅ぐどんな臭いとも明らかに違うものだと、多くの方が語っています。
統計から見る孤独死の現状
実感だけでなく、データからも孤独死(自宅死)が身近な問題であることがわかります。
警察庁が2024年に初めて全国集計を公表したところによると、自宅で亡くなった一人暮らしの方は年間およそ7万6,000人にのぼり、そのうち65歳以上が全体の約8割を占めていました。さらに内閣府の推計では、死後8日以上経ってから発見される「孤立死」は2025年に22,222人と過去最多を更新し、前年からも増加しています。
死後発見までの期間別に見ると、令和6年の集計では、1日以内に発見されたケースが28,756件、2日〜1週間以内が25,408件、8日以上が21,856件となっており、発見までに1週間以上を要するケースが全体の少なくない割合を占めていることがわかります。
近年は高齢者だけでなく、20〜30代の若い世代にも「セルフ・ネグレクト」(自らの生活や健康管理を放棄してしまう状態)を背景とした孤立死が広がりつつあると指摘されており、孤独死は特定の世代や状況に限った問題ではなくなってきています。

特殊清掃にかかる費用の目安
孤独死の現場では、体液の染み込みや腐敗臭、害虫の発生などにより、一般的なハウスクリーニングでは原状回復が難しいケースが多く、専門の特殊清掃業者への依頼が必要になります。
業界団体の調査では、孤独死現場の特殊清掃・原状回復にかかる費用は平均で数十万円規模とされており、間取りの広さや発見までの経過期間、汚染の程度によって金額は大きく変動します。発見が早く汚染が軽微な場合は数万円〜十数万円程度で済むこともありますが、発見までに時間が経過し、体液が床下や壁内部まで浸透しているケースでは、解体や防臭コーティングなどの追加工程が必要となり、数十万円〜百万円を超えることもあります。
費用を左右する主な要因は次の通りです。
- 発見までの経過日数:日数が長いほど汚染範囲が広がり、費用も上がりやすい
- 間取り・広さ:清掃範囲が広いほど作業時間・人員が増える
- 季節:夏場は腐敗の進行が早く、消臭・除菌の工程が増える傾向がある
- 残置物の量:遺品整理を同時に依頼する場合、その処分費用も加算される
費用負担については、賃貸物件の場合は相続人や連帯保証人が負担するのが原則ですが、大家さん・管理会社が加入する孤独死保険から補填されるケースもあります。実際に依頼する際は、複数の業者から見積もりを取り、作業工程ごとの内訳が明確に示されているかを確認することが、トラブルを避けるうえで重要です。
出典:警察庁「警察取扱死体のうち、自宅において死亡した一人暮らしの者」、内閣府 孤独死・孤立死ワーキンググループ取りまとめ、日本少額短期保険協会「孤独死現状レポート」ほか各種調査(数値は記事公開時点のものです)
今後の展望
今回の孤独死のあった部屋のミニチュアは、ToDo-Company代表の増田が作成しました。テーマを一つひとつ決めながら、丁寧に手作りしている模型になります。
制作を始めた当初はほとんど注目されませんでしたが、エンディング産業展への出展をきっかけに大きな反響をいただき、以降は毎年の展示を通じて多方面から関心を寄せていただくようになりました。今後は福祉の分野にも活動の幅を広げ、ミニチュアを通して「人とのつながり」の大切さを伝えていきたいと考えています。
生きてる側もコミュニケーションを持つ必要がある
- 孤立しているから孤独死する
- 核家族化しているから孤独死する
- 身寄りがないから孤独死する
本当にそうでしょうか。世間ではこうした言葉で孤独死を語りがちです。しかし、たとえ日頃からコミュニケーションを取っていても、周囲が少し気にかけなければ、発見までの1週間はあっという間に過ぎてしまいます。
朝は挨拶を交わした人が、昼に体調を崩して倒れていても、周りは気づけません。夜が来て、次の朝を迎えても「体調でも悪いのかな」と見過ごしてしまう。翌日、新聞が溜まっていても「旅行にでも行ったのかな」とやり過ごしてしまう。そうして2〜3日はすぐに経ってしまいます。夏場であれば、その間に強い臭いが発生し、状況はさらに深刻になります。
家族が異変に気づいて駆けつける頃には、死亡から4日以上が経過していることも珍しくありません。近隣の方に「なぜ通報しなかったのか」と尋ねたことがありますが、返ってきたのは「第一発見者にはなりたくなかった」という言葉でした。
けれど、孤独死は誰にとっても他人事ではない時代です。生きている私たちが自分のことだけを考えていたら、社会はどうなっていくのでしょうか。
私たちは、決して孤立していたわけではない人までもが「孤独死」と一括りにされてしまう現状に疑問を感じ、この言葉を「自宅死」と呼ぶようにしています。

講演内容について
ToDo-Companyでは、代表・増田によるミニチュアをもとにした講演活動も行っています。展示会での反響をきっかけに、自治体や福祉関係者、不動産関連の団体などからも講演のご依頼をいただく機会が増えてきました。
講演では、主に以下のような内容をお伝えしています。
- 孤独死(自宅死)の実態:現場で実際に見てきた部屋の様子や、発見までの経緯をもとに、統計だけでは伝わりにくいリアルな実情をお話しします。
- ミニチュア制作の背景と想い:一つの作品を仕上げるまでの過程や、故人の暮らしをどのように読み取り、再現しているかをご紹介します。
- 遺族の心情:突然の別れに直面したご家族が、どのような気持ちで現場と向き合うことになるのか、実際のエピソードを交えてお伝えします。
- 大家さん・管理会社が抱える課題:物件の損傷や次の入居募集など、当事者だからこそわかる悩みについて解説します。
- 早期発見のためにできること:近隣や家族が日常の中で気づける小さなサインについて、具体例を挙げながらお話しします。
- 孤立と孤独死は必ずしもイコールではないという視点:交流があっても孤独死に至ってしまうケースを紹介しながら、「自宅死」という呼び方に込めた思いをお伝えします。
講演は、自治体主催の福祉セミナーや、不動産・賃貸管理業界向けの研修、学校や地域コミュニティでの啓発活動など、幅広い場でご活用いただけます。ミニチュアの展示とあわせて実施することで、より実感を持って孤独死の現状を知っていただけるよう工夫しています。
講演のご依頼やお問い合わせについては、お問い合わせフォームより承っております。過去の講演実績は講演・セミナー実績ページでもご紹介していますので、あわせてご覧ください。
よくある質問
このミニチュアは誰が作っているのですか?
今回ご紹介したミニチュアは、ToDo-Company代表の増田が作成しました。実際にあった孤独死の現場をもとに、テーマを決めながら手作業で再現しています。
ミニチュアの制作にはどのくらい期間がかかりますか?
今回の作品は、仕事の合間を縫って約3ヶ月かけて制作されました。材料はホームセンターで調達し、木材を一つひとつ加工しながら当時の部屋の様子を再現しています。
なぜ孤独死の部屋をミニチュアで再現しているのですか?
遺族の悲しみや大家さんの苦悩、そして孤独死という現実を、より多くの人に伝えるためです。文章や写真だけでは伝わりにくい部屋の空気感を、ミニチュアという立体物を通じて表現しています。
孤独死と「自宅死」という呼び方はどう違うのですか?
「孤独死」という言葉は、周囲と関わりを持たずに孤立していた人が亡くなったというイメージを与えがちです。しかし実際には、家族や近隣と交流があったにもかかわらず、発見が遅れてしまうケースも少なくありません。私たちはそうした実情を踏まえ、あえて「自宅死」という呼び方を用いています。
孤独死を防ぐために、周囲の人ができることはありますか?
普段の生活音や挨拶、郵便物の溜まり具合など、小さな変化に気づくことが早期発見につながります。2〜3日いつもと違う様子が続いた場合は、家族や管理会社、近隣の方に声をかけるなど、気にかけることが大切です。
孤独死の現場は誰が片付けるのですか?
状況によっては、ご遺族が現場に立ち会うことが難しい場合もあります。今回のケースでも、警察の判断でご遺族は部屋に入らず、特殊清掃業者が片付けを行いました。貴重品や遺書などの捜索・保管も、業者が責任を持って対応します。
孤独死は実際どのくらいの件数が起きているのですか?
警察庁の集計によると、自宅で亡くなった一人暮らしの方は年間およそ7万6,000人で、その約8割を65歳以上が占めています。また、死後8日以上経ってから発見される「孤立死」は2025年に22,222人と過去最多を更新しました。
特殊清掃の費用はどのくらいかかりますか?
発見までの経過日数や間取り、汚れの程度によって大きく異なりますが、業界団体の調査では平均で数十万円規模とされています。発見が早ければ数万円〜十数万円で済むこともあれば、発見が遅れて床下まで汚れが及んだ場合は百万円を超えることもあります。
