- 「ハエが異常に多いと思って窓をのぞいたら発見してしまった」
- 「何日も連絡が取れないので部屋を訪ねたら倒れていた」
- 「近隣住民から相談があり様子を見に行ったら異変に気づいた」
この記事のポイント
本記事は、孤独死の現場清掃を専門とする遺品整理人が、実際の現場経験をもとに「発見時にまず何をすべきか」から「清掃・原状回復が完了するまでの流れ」を解説するものです。ご家族や大家様、管理会社の方が突然の事態に直面したとき、落ち着いて対応できるようお役立てください。
目次
孤独死とは何か
孤独死とは、誰にも看取られることなく一人暮らしの住居内で亡くなり、死後しばらく経ってから発見される状態を指す言葉です。2000年前後からメディアで使われ始め、同時期に行政などでは「孤立死」という表現も使われるようになりました。
私たちがこれまで数多くの現場に立ち会ってきた実感として、孤独死とされる案件の多くは、家族や知人と日常的に連絡を取り合っていた方が、突発的な発作などによって自宅で亡くなったケースです。「孤独」というよりも、住み慣れたご自宅で最期を迎えた「自宅死」と呼ぶ方が実態に近いと感じています。
一人暮らしの方が倒れているのを発見したら、まず何をすべきか
「最近姿を見ない」「いつもと違う臭いがする」といった異変に気づき、窓越しに住民が倒れているのを発見した場合は、状況に応じて次の2パターンで対応が異なります。
- 亡くなっているか判断がつかない場合 → すぐに救急車(119番)を呼ぶ
異臭がなく、ただ倒れているだけの状態が確認できる場合は、迷わず119番へ通報し、救急隊が到着するまで待機してください。道路沿いなど分かりやすい場所で待ち、案内できるようにしておくとスムーズです。
救急隊が到着し、意識や呼吸がある場合はそのまま病院へ搬送されます。呼吸が確認できない場合は、救急隊から警察へ通報が行われます。
- すでに亡くなっており異臭がある場合 → すぐに警察(110番)へ通報する
時間の経過とともに、遺体からは腐敗による臭いが発生します。このような状態が確認できる場合は、迷わず警察に通報してください。事件性の有無を調べる現場検証が行われるため、室内のものにはむやみに触れないよう注意しましょう。
警察は自然死か事件かを判断するために現場を調べます。不用意に物へ触れて指紋が残ってしまうと、無用な疑いをかけられる可能性もあるため注意が必要です。
ワンポイント
故人のご親族の連絡先がわかる場合は、警察にメモを渡すことで連絡してもらえます。連絡先がわからない場合は、物件の管理会社や大家さんの連絡先を伝えるとスムーズに進みます。
現場検証と遺族への連絡
現場検証はなぜ必要か
孤独死が発生した場合、まず事件性の有無を確認するための現場検証が行われます。孤独死とされる案件で事件性があるケースは多くありませんが、発見までの日数が経過していると遺体の損傷が激しく、身元の特定にすぐには至らないこともあります。
遺族への連絡は、保証人をたどって血縁関係を確認する形で進められますが、いくつかの壁に直面することがあります。
保証人がすでに亡くなっていたり、電話番号が使われなくなっていたりするケースも少なくありません。また、契約書のない古い信用貸しの物件では、そもそも保証人の連絡先自体が不明な場合もあります。
遺族が見つかった場合
警察や役所の調査により保証人や血縁者が判明すると、遺族へ連絡が入り、故人の生活状況や発見の経緯が伝えられます。その後、遺族は安置所へ確認に向かうことになります。
血縁関係の確認には書類が必要になるため、あらかじめ次の3点を用意しておくとスムーズです。
- ご自身の印鑑
- 故人とのつながりが確認できる戸籍謄本・住民票
- 安置場所に何日か滞在する場合の着替えなど
DNA鑑定が不要と判断されれば、死亡届の提出、火葬許可証の取得を経て火葬が可能になり、遺骨を迎えに行く流れになります。
遺族が見つからない場合・引き取りを辞退される場合
発見までに長期間が経過し親族が見つからない場合や、見つかっても遺骨の引き取りを辞退された場合には、「行旅死亡人取扱法」に基づき、地元自治体が火葬を行います。引き取り手がないまま一定期間が過ぎると、無縁塚に埋葬されることになります。
近年は、故人の生活実態が分からないほど関係が疎遠になっていたご家族も多く、引き取りを辞退されるケースは増加傾向にあります。家族の在り方は様々であり、一概に良し悪しを判断できるものではありません。
故人の葬儀について
孤独死で発見された場合でも、簡素な形でよいので葬儀を行っておくことをおすすめします。大規模な葬儀は必須ではありませんが、疎遠になっていた場合でも、火葬前に対面できる状態であれば、最期のお姿を見ておくことは大切な区切りになります。
発見から火葬までは慌ただしい日々が続きますが、無理をしすぎないことも重要です。遠方から駆けつけて体調を崩してしまうと、その後の手続きに支障が出てしまうこともあります。まずは火葬までの対応に集中しましょう。
複数の遺族で対応できる場合は、葬儀の手配をする人と部屋の清掃手配をする人とで役割分担すると、一人あたりの負担を減らすことができます。
孤独死した部屋を発見したらすぐに知らせよう。異臭に悩む近隣住民のためにできること
遺品整理・特殊清掃の流れ(6ステップ)
賃貸物件の場合、次の入居者を迎えるための原状回復が必要になりますが、体液の除去や消臭作業は必ず特殊清掃・遺品整理の専門業者に依頼しましょう。ここでは、依頼から明け渡しまでの流れを6つのステップでご紹介します。

ステップ1:現場検証
近隣の方やご家族が意識・呼吸のない状態で異臭を発している場合は、すぐに警察へ通報してください。事件性の有無が判明するまでは、室内に立ち入らないようにしましょう。
DNA鑑定が必要な場合、死因の特定と血縁関係の確認には日数がかかります。部屋に入れるようになるまでの間、大家さんには現状と、許可後の清掃スケジュールの見込みを伝えておくと安心してもらえます。
ワンポイント
賃貸物件の場合、大家さんは全体スケジュールが見えないと不安になり、リフォームの手配も遅れがちです。決まっていないことがあっても、その時点での状況をこまめに共有することが大切です。
DNA鑑定は早ければ1週間程度、時間がかかる場合は2ヶ月程度を要することもあるため、日程に幅があることを理解しておきましょう。
注意点
体液には水分と油分が含まれており、遺体を搬送した後も残った体液が建物を腐食させていきます。放置する日数が長引くほど被害は拡大し、警察の許可が下りる前に臭いが原因で近隣トラブルや風評被害サイトへの掲載につながることもあります。許可が出次第、速やかに着手できるよう早めに問い合わせておきましょう。
ステップ2:現地見積もり
現場検証やDNA鑑定が終わり室内に入れるようになった後も、注意すべき点があります。
注意点
孤独死のあった部屋には大量の大腸菌が発生しています。通常の大腸菌に感染すると下痢を引き起こしますが、毒性の強いO-157などに感染すると腸内に重い炎症を起こすこともあります。
そのため現地見積もりの際にも初期除菌が欠かせません。当社では大腸菌を滅菌できる除菌液を使用したうえで、お部屋にお伺いして見積もりを行っています。


室内にどれほどの菌が発生しているかは目視では判断できません。市販の除菌スプレーは、誰が使っても安全なように濃度が薄く調整されているため、滅菌効果はほとんど期待できず、実質的には水に近いと考えたほうがよいでしょう。
O-157に感染すると、小さなお子様や高齢の方は重症化・死亡するリスクもあるため、必ず除菌を行いながら入室することが必要です。異臭のなかで生活を続ける近隣住民のためにも、清掃は早急に進める必要があります。
ステップ3:清掃の実施
お見積り内容にご納得いただければ、最短日程で施工に入ります。臭いが発生している状態でも、多くの場合3日以内に一時的な臭いの軽減が可能です。本格的に臭いを抑えるには1〜2週間程度の脱臭作業が必要ですが、一時的な軽減であれば最短対応が可能です。
まず、亡くなっていた場所を特定し、畳の下や床下まで体液が浸透していないかを確認します。浸透している場合は、その部分を切除したうえで洗浄・消毒を行います。
ご注意
畳を撤去するだけでは臭いは解消しません。体液が浸透した箇所そのものを洗浄しない限り、臭いの再発は避けられません。
体内には想像以上の量の体液が含まれており、流れ出た体液は最初は水のように隙間から下方向へ広がっていきます。一方、油分は壁のボードや柱を伝って上方向へにじむように浸透していく特徴があります。
ステップ4:遺品整理の並行実施
清掃と並行して、故人が残された遺品の整理も行います。ただし、すべてを処分するわけではありません。
- 通帳・印鑑
- 登記簿・権利書・賃貸契約書
- 貴重品・宝飾品
- 現金・クレジットカード・ポイントカード
- 携帯電話・パソコン
- 年賀状・手紙
- テレホンカード・交通系ICカードなど
清掃箇所の洗浄と並行してこれらの品が見つかった場合は、専用の保管箱に入れ、ご遺族に確認いただいたうえで処分または引き渡しを判断します。室内には洗浄用の薬剤を使用しているため、保管箱はスタッフが外へ運び出しますのでご安心ください。
ステップ5:脱臭・消臭作業
室内が空になった後、消臭・脱臭作業に入ります。この作業は手作業で行い、消臭と脱臭を繰り返しながら、通常の生活臭に近い状態まで戻していきます。
除菌は短時間で完了しますが、消臭は複数回の施工を要するため、数時間で完了するものではありません。
原状回復工事に入れば解決すると思われがちですが、そうではありません。臭いが残っていると、工事を担当する職人が入室を敬遠してしまうことがあるため、工事前にしっかりと脱臭しておくことが重要です。専門業者が事前に脱臭を行うことで、工事後に臭いが戻ってしまう事態を防ぐことができます。
ステップ6:明け渡し
すべての工程が完了し、臭いが通常の生活臭レベルまで戻れば、ほぼ気にならない状態になります。そこまで戻れば、壁紙の張り替えや畳の表替え、床の張り替えなどを経て、新しい入居者を迎えられる状態になります。
孤独死の清掃は緊急性の高いケースがほとんどですが、早急に対応すれば大きなトラブルに発展することはありません。対応を先延ばしにしてしまうと、近隣からの苦情などをきっかけに事態が悪化していく傾向があります。
そうならないためにも早めの対処が重要であり、悪質な事故物件情報サイトへの掲載を防ぐことも、大家さんとご遺族双方にとって大切なポイントです。近隣の方が発見された場合であっても、ご遺族や故人、大家さんへの配慮として、そうしたサイトへの投稿は控えていただくようお願いします。
専門業者に依頼するメリット
- 遺体の痕跡を直接見なくて済む
- 確実な状態で大家さんへ部屋を返せる
- 汚損箇所を自分で清掃する必要がない
- 他の死後手続きに時間を充てられる
- 賠償金額を抑えられる可能性がある
- 臭いの心配がなくなる
- 「どうすればいいか」という不安が解消する
- 故人へきちんと報告できる
- 大家さんとのトラブルを回避できる
- 近隣からの苦情を防げる
これまで数多くの現場に対応してきた経験から言えるのは、トラブルの多くは「業者選びを誤ってしまうこと」から生じるということです。
中途半端な対応は、大家さんとの明け渡し交渉のもつれにつながりやすくなります。経験の浅い業者では、荷物の搬出はできても消臭・脱臭が不十分で、後々ご遺族と大家さんの間でトラブルに発展してしまったケースも見てきました。
他社が施工した後に脱臭が不十分だった物件は、手直しにも限界があります。最初の業者選びを誤らないことが、スムーズな明け渡しにつながる最大のポイントです。
経験豊富な専門業者に依頼することで、上記のようなメリットを得ることができます。何よりも「早めの対応」が、トラブルを未然に防ぐ唯一の方法です。
風評被害を防ぐために早期対応が重要な理由
大家さんが最も不安に感じるのが「風評被害」です。
いわゆる事故物件情報サイトに一度掲載されてしまうと、運営者に削除を依頼しても対応してもらえないことがほとんどです。実際には事故物件に該当しない場合でも、心無い投稿によって事故物件のように扱われてしまうリスクがあります。
そうした情報が掲載されると、入居希望者が集まりにくくなり、部屋が長期間空いたままになってしまいます。当然、その間の家賃収入は得られません。
そうした事態を避けるためにも、掲載される前に速やかに清掃・修繕を済ませておくことが望ましいといえます。一般的に事故物件として扱われるのは自殺や殺人があった部屋が中心ですが、近年は孤独死のあった物件も掲載対象になりつつあるのが実情です。
本来、孤独死は自然死または異常死に分類され、事故物件には該当しません。しかし、そうした物件に興味本位で住みたがる人がいることも影響し、事故物件のようなイメージがついてしまっているのが現代の状況です。
ご遺族や大家さんの心情を考えれば、興味本位で扱うことは決して望ましいことではありません。
2021年5月20日、国土交通省より「宅地建物取引業者による人の死に関する心理的瑕疵の取扱いに関するガイドライン」が発表されています。
孤独死を発見した際は、できるだけ早く通報し、ご遺族も故人と大家さんのために、清掃を最優先事項として進めることをおすすめします。お部屋をきれいに整えたうえで故人を偲ぶことが、関係者すべてにとって最も丸く収まる形といえるでしょう。
よくある質問
孤独死の清掃・特殊清掃について、お客様からよくいただくご質問をまとめました。
特殊清掃の費用相場はどれくらいですか?
お部屋の広さや汚れの程度、体液の浸透範囲によって金額は大きく変わります。ワンルームで軽度な場合は数万円台から、体液の浸透が床下まで及ぶ重度なケースでは数十万円台になることもあります。まずは現地でのお見積りにて、内訳を含めた金額をご提示いたします。
依頼から完了までどのくらいの期間がかかりますか?
お見積り後、最短即日〜数日で初期対応(体液除去・初期消臭)に着手可能です。ただし本格的な脱臭作業には1〜2週間程度、原状回復工事まで含めると1ヶ月前後かかるケースもあります。現場の状態により前後しますので、お見積り時に具体的なスケジュールをご案内いたします。
茨城県内であればどのエリアまで対応してもらえますか?
水戸市・つくば市・土浦市・日立市・ひたちなか市をはじめ、茨城県内全域に対応しております。県内であれば市区町村を問わずご相談いただけますので、まずはお気軽にお問い合わせください。
賃貸物件の場合、清掃費用は誰が負担するのですか?
一般的には、まず連帯保証人やご遺族が費用を負担し、その後、賃貸借契約や相続の状況に応じて大家さんとの間で費用分担が協議されるケースが多くなっています。判断が難しい場合は、管理会社や弁護士など専門家にご相談いただくことをおすすめします。
火災保険や孤独死保険は使えますか?
ご加入の保険内容によっては、特殊清掃費用や原状回復費用の一部が補償対象となる場合があります。保険証券のご確認や保険会社への確認方法についても、必要に応じてサポートいたしますのでお気軽にご相談ください。
現地立ち会いは必須ですか?
立ち会いいただくのが望ましいですが、遠方にお住まいの場合や心理的に難しい場合は、写真や動画でのご確認、鍵の一時的なお預かりによる代理対応も可能です。ご事情に合わせて柔軟に対応いたしますので、ご相談ください。
深夜・早朝や休日でも対応してもらえますか?
近隣への配慮や臭いの拡散防止の観点から、早急な対応が必要なケースについては休日・時間外のご相談も承っております。まずはお電話またはフォームよりご連絡ください。
