遺品整理とマザーロス|片付けられない気持ちの理由

2016/2/13

お母様が亡くなられてから、そのお部屋の時間だけが、ずっと止まったままになっていました。

生活を変えることがどうしてもできず、遺品整理をしないまま、何年もの月日が流れてしまった。それは、お母様を想う気持ちが誰よりも強かったからこそのことだったのだと思います。まるで、また一緒に食卓を囲める日が来るかのように、その場所はそのままの姿で残されていました。外出することも少なくなり、ご自宅の部屋で静かに過ごす日々が続いていたそうです。

もう戻ってこないお母様。かつて一緒に食事をしたテーブルだけが、その優しかった時間を、今も静かに物語っていました。

今回は、そんなお母様への深い想いを抱えながら、少しずつ前へ進もうとされた宮本様との、遺品整理の時間をご紹介させていただきます。

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何年もそのままに

お母様を亡くされ、葬儀が終わった後も、遺品整理をすることができないまま、お部屋はその日のままの姿で残されていました。

「マザーロス」という言葉をご存知でしょうか。母を亡くした喪失感から生まれる、深い悲しみの感情を指す言葉です。

「悲しみは時間だけが解決してくれる」「いつまでも悲しんでいると故人が安心して旅立てない」そうした、慰めのつもりで使われる言葉の数々は、実際にその悲しみのただ中にいる方にとっては、なかなか心に届かないものかもしれません。

誰もが複雑な悲嘆に陥るわけではありませんが、一度その気持ちに深く沈んでしまうと、そこから抜け出すのに数年かかることもあると言われています。私たちも、多くの書籍やご遺族との対話の中で、そうしたお話を何度もお聞きしてきました。

では、なぜマザーロスという感情が生まれるのでしょうか。

皆様にも、かけがえのない大切な人がいらっしゃると思います。その方との思い出が温かいものであればあるほど、心に深く刻まれていくものです。そして、一緒に過ごした時間が特別なものであるほど、その存在がなくなった時に初めて、その尊さに気づかされるのだと思います。

親子という関係は、生まれてくる子供が親を選ぶことはできません。けれど、最高の親と出会えたその瞬間から、その存在はかけがえのないものへと育っていくのです。

私たち遺品整理クリーンサービスは、現場で数多くのご遺族と向き合う中で、こうした心の動きを日々感じさせていただいております。それは、専門的にこの仕事に携わっているからこそ学ばせていただけることであり、一般的な業者ではなかなか深く向き合うことのできない領域なのかもしれません。

「なぜ、何年もお部屋をそのままにしておきたいと思うのだろう」そう疑問に思われる方もいらっしゃるかもしれません。

その答えは、そのお部屋が、ご家族にとって、そしてその方ご自身にとって、心から安らげる場所だったからだと思います。

その居心地の良さから、大切な人を忘れたくないという気持ちが、片付けられない心理へとつながっていく。ご自身の立場に立って考えれば、心の整理がつくまでは、そのままにしておきたいと思う気持ちは、とても自然なことなのではないでしょうか。

その期間は人それぞれ違うと思いますが、どんなに長い時間であっても、故人を想い続けるということ自体が、とても尊いことだと私たちは感じています。

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片付けることが、気持ちの変化に

今回、ご遺族様のお見積りに伺った際、お顔には、まだ固い表情が浮かんでいらっしゃいました。しかし、ご一緒に遺品整理を進めていく中で、少しずつお気持ちに変化が生まれていくのを、私たちは間近で感じさせていただきました。

お母様と共に過ごされてきたたくさんの遺品が、目の前を静かに通り過ぎていきます。それは同時に、これまでの日常の役目を、少しずつ終えていく時間でもありました。遺品とはいえ、それがお部屋から一つ、また一つとなくなっていく様子を見ているのがどうしても辛くなり、ご遺族様は作業の途中で、何度かお部屋の外へ出られることもありました。

ハンカチでそっと涙を拭いながら、少しの間、席を外されたその姿から、込み上げてくる感情の深さが伝わってきました。

そんな作業の中で、私たちはある変化に気づきました。

作業が始まった当初は、うつむきがちに遺品を見つめていらっしゃったご遺族様でしたが、作業が進むにつれて、少しずつお顔に笑顔が戻ってこられたのです。過去の悲しみに向き合いながらも、確かに今から前へと進もうとされているお姿を、私たちはそこに見ることができました。

遺品整理という作業は、単に物を片付けるだけの行為ではありません。故人との思い出を一つひとつ丁寧に振り返りながら、ご遺族様ご自身が、これからの人生を歩み出すための、大切な心の区切りをつける時間でもあるのだと、改めて感じさせていただいた瞬間でした。

作業を進める中で、お母様が長年愛用されていたエプロンや、台所に残されたままの食器、書き込みの残るカレンダーなど、日常のささやかな品々が次々と見つかりました。そのひとつひとつを手に取るたび、ご遺族様は少し遠くを見るような表情を浮かべ、「これ、よく使ってたな」「これは、確か誕生日に贈ったものです」と、ぽつりぽつりと思い出を語ってくださいました。

私たちスタッフは、そうしたお言葉にできるだけ耳を傾けながら、決して急かすことなく、ご遺族様のペースに合わせて作業を進めさせていただきました。時には手を止めて、一緒にその品を眺める時間を持つこともありました。悲しみに寄り添いながら、同時に前へ進むお手伝いをする。それが、私たちの仕事の中でもっとも大切にしている部分です。

作業も終盤に差し掛かった頃、ご遺族様が「なんだか、少し肩の荷が下りた気がします」と、静かにおっしゃったのが印象的でした。長年抱えてこられた気持ちに、小さな区切りがついた瞬間だったのかもしれません。

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スタッフ遺品整理

ご兄弟の想い

お母様と最期まで一緒に暮らしていらっしゃったご遺族様のご様子を、心配されていたご兄弟が、今回の遺品整理をご提案されたそうです。

「故人が使っていたものを見て、思い出すことはとても良いことだと思います。けれど、すべてをそのまま残しておいては、新しい生活を始めているとは言えませんよね」

そうお話しくださったご兄弟の言葉には、ご遺族様のこれからを想う、深い優しさが込められているように感じました。

確かに、実用性のある形見の品は、受け取る方にも喜んでいただけることが多いものです。一方で、実用性のない品については、いただいても、素直に喜ぶことが難しい場合もあるのが実情かもしれません。

ご兄弟がご遺族様のためにできることは、ご自身の心にひとつの区切りをつけ、これからの生活を前向きに歩んでいけるよう、そっと後押しをすることだったのだと思います。

前に進むという決断には、大きな勇気が必要です。不安を感じることも当然あるでしょう。それでも、進まなければならない時が、人生には訪れるものです。もしも、これまでの生活が立ち行かなくなってしまうようなことがあれば、それはきっと、お母様が心から望んでいらっしゃったことではないはずです。

大切な人を想う気持ちと、自分自身の暮らしを大切にすること。その両方を守っていくことこそが、故人への何よりの供養になるのではないかと、私たちは感じています

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空き家問題について

近年、社会全体で大きな課題となっているのが「空き家問題」です。今回のように、大切な方を亡くされた後、ご遺族が気持ちの整理をつけられないままお部屋が残されてしまうケースは、決して珍しいことではありません。

国土交通省の資料によれば、適切な管理が行われていない空き家は、防災・衛生・景観といった面で、地域住民の生活環境に深刻な影響を及ぼす可能性があるとされています。地域の安全と暮らしを守るため、また空き家の有効な活用のためにも、適切な対応が必要とされているのです(参考:現在、空き家は全国で約820万戸〈平成25年時点〉にのぼり、401の自治体が空き家条例を制定〈平成26年10月時点〉。国土交通省の資料より)。

特別措置法では、特に問題のある空き家を「特定空き家」として定義しており、国土交通省はその判断基準として、次の4つを示しています。

  1. 基礎や屋根、外壁などに不具合があり、倒壊の危険性があるもの
  2. ごみの放置などにより、衛生上の問題があるもの
  3. 適切な管理が行われず、周辺の景観を著しく損なっているもの
  4. その他、周辺の生活環境の保全のために、放置することが適切でないもの

「特定空き家」として認定された物件の所有者に対しては、行政から修繕や撤去の指導、勧告、命令が行われることがあります。それでも改善が見られない場合には、行政が代わって強制的に撤去を行い、その費用を所有者に請求する「代執行」という措置がとられることもあります。

空き家が長期間放置されることで懸念されるのが、放火や、住居のない方が無断で入り込んでしまうリスクです。実際に、ごみが放置された空き家に人が住み着き、そこから火災が発生してしまったという事例も報告されています。

こうした法整備によって、今後どのような変化が生まれていくのでしょうか。

行政の立場と、実際にそこで暮らしてきたご家族の想いは、必ずしも同じ方向を向いているとは限りません。日本には、家族を偲ぶ深い心と、ものを大切にする精神文化が根付いていますが、その一方で、亡くなった方に関わるものを、なるべく早く片付けてしまいたいと感じる風潮も、確かに存在しているように思います。

それは、物事を「縁起」として捉える、日本人らしい感性の表れなのかもしれません。良い出来事はいつまでも心に留めておきたいと願う一方で、あまり良くない出来事については、お清めをして早めに区切りをつけたいと感じる。そうした気持ちのバランスの中で、私たちは日々の暮らしを営んでいるのだと思います。

だからこそ、ご遺族お一人おひとりのペースを大切にしながら、心の準備が整ったタイミングで、丁寧に寄り添わせていただくことが、私たちにとって何より大切な役割だと考えています。

実際に、多くの自治体では、空き家問題への対応として、さまざまな取り組みが進められています。例えば、空き家を解体する際の費用の一部を補助する制度や、空き家をリフォームして地域の交流拠点として活用する事例、さらには空き家バンクを通じて移住希望者とマッチングを行う仕組みなど、その内容は地域によって多岐にわたります。

こうした制度の多くは、「早めに動き出すこと」を前提として設計されています。相続や名義変更の手続き、固定資産税の扱いなど、時間が経つほど複雑になっていく問題も少なくありません。だからこそ、気持ちの整理がついた段階で、少しずつで構いませんので、専門家に相談してみることをおすすめしています。

私たちも、遺品整理だけでなく、その先にある空き家の管理や活用についてのご相談をいただくことがあります。ご遺族様の中には、「実家をどうすればいいのか分からない」というお悩みを抱えていらっしゃる方も少なくありません。そうした際には、私たちの知る範囲で、自治体の窓口や専門の相談機関をご紹介させていただくこともございます。

大切なのは、一人で抱え込まないことです。ご家族の想いが詰まった住まいだからこそ、慎重に、そして前向きに、次の一歩を考えていっていただければと思います。

遺品整理人として感じたこと

「ここまで綺麗にしてくださって、本当にありがとうございます」

今回も、そのような温かいお言葉をいただくことができました。ご遺族様には、お見積りの段階から作業完了まで、長い時間をご一緒させていただき、お母様との数々の思い出話もお聞かせいただきました。

一般的な遺品整理業者にご依頼いただく場合と、専門性を持って取り組んでいる私たちのような業者にご依頼いただく場合とで、どのような違いがあるのかをご理解いただけたことに、心から感謝しております。これからも、ご依頼くださるすべてのご遺族様に、より良いサービスをお届けできるよう努めてまいります。

遺品整理業界の中には、資格や実績を大きく打ち出し、それを安心材料として掲げる業者も少なくありません。けれど、私たちが本当に大切だと考えているのは、資格の有無ではなく、ご依頼くださったご遺族様お一人おひとりに、私たちらしい丁寧な対応を、どこまで真心を込めてお届けできるかということです。「人のお役に立ちたい」という気持ちだけでは、決して務まらない仕事だと、日々の現場で実感しております。

弊社には、「遺品整理本部」「孤独死清掃本部」「遺品整理人」という3つのブランドがあり、それぞれが責任を持って、ご遺族様へのサービス提供にあたっております。

これから遺品整理のお仕事に携わっていきたいと考えている方がいらっしゃれば、私たちからお伝えしたいことがあります。それは、「ご遺族様のお気持ちを、何よりも大切に考えてほしい」ということです。

この業界で働く方には、皆様それぞれに、人を思いやる素質が備わっていると感じています。あとは、その気持ちを、日々の対応の中でどう形にしていくか。その積み重ねこそが、サービスの質を育てていくのだと思います。

本当の安心は、ブランドの知名度や、資格の有無だけで生まれるものではありません。目の前のご遺族様のために、どうにかして力になりたいという、真摯な姿勢そのものこそが、遺品整理という仕事の本質なのだと、私たちは考えています。

弊社は、この業界で日々真摯に向き合っていらっしゃるすべての方々を、心から応援しています。

最後になりますが、ご遺族様、この度は誠にお悔やみ申し上げます。そして、私たちにお心を寄せてご依頼いただきましたこと、心より感謝申し上げます。

遺品整理でよくある質問

q

何年も遺品整理をしないままでも大丈夫でしょうか?

a

はい、大丈夫です。遺品整理に「正しいタイミング」というものはありません。ご遺族様のお気持ちの整理がついた時こそが、始めどきだと私たちは考えています。何年経っていても、丁寧に対応させていただきますので、ご安心ください。

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遺品を見ると悲しくなってしまい、自分一人では作業を進められません。

a

そのようなお気持ちは、決して珍しいことではありません。私たちスタッフが寄り添いながら、ご遺族様のペースに合わせて作業を進めますので、無理をせず、休みながらでも大丈夫です。つらい時は、その場を離れていただいても構いません。

q

形見として残したいものと、手放すものの判断に迷っています。

a

判断に迷われるのは自然なことです。私たちが一緒に品物を確認しながら、「残す・迷う・手放す」の3つに分けて整理するお手伝いをいたします。その場で決めきれないものは、一時的にお預かりすることも可能です。

q

兄弟姉妹で意見が分かれてしまいそうで心配です。

a

ご家族の中でお気持ちが異なることは、よくあることです。私たちは中立的な立場で、それぞれのお気持ちを尊重しながら、ご家族皆様が納得できる形で作業を進められるよう配慮しております。

q

実家が空き家になった場合、遺品整理の後はどうすればいいですか?

a

ご相談内容に応じて、自治体の空き家関連の相談窓口や、解体・売却・活用に関する専門機関をご紹介することも可能です。まずは遺品整理を終えてから、ゆっくりと今後の方針を考えていただければと思います。

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遺品整理の作業中、故人の思い出話を聞いてもらうことはできますか?

a

もちろんです。作業の合間に、故人様との思い出をお話しいただくご遺族様は少なくありません。私たちも、そのお話に耳を傾けながら、丁寧に作業を進めさせていただきます。

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