【特殊清掃のリアル】茨城の孤独死マンションで突きつけられた294万円リフォーム請求。東京のプロが「完全脱臭」と保険適用で解決した実話

弟の孤独死、突然の電話から始まった特殊清掃の惨劇

その日、私(62歳)のもとに一本の電話がかかってきました。声の主は不動産屋の担当者で、いつもより早口で、どこか事務的な調子でした。

「弟さんが亡くなっているのが見つかりました。警察の現場検証は終わっているので、なるべく早めに部屋の対応をお願いできますか!」

55歳になる弟が住んでいたのは、茨城県内の2DKの賃貸。この部屋に20年近く住み続けていたと聞いて、余計に胸が締めつけられました。定年を控えたこの歳になって、まさか弟の方が先に逝ってしまうとは、考えたこともありませんでした。私は東京に住んでおり、弟だけが茨城に出ていったこともあり、ずっとひとり暮らしで、たまに電話で話す程度の関係でした。両親もすでに他界していたこともあり、いざという時に頼れるのは自分しかいないと分かっていました。

電話を切った後、頭の中が真っ白になったのを覚えています。悲しみよりも先に、「これから何をすればいいのか」という不安の方が大きかったかもしれません。慣れない土地で、60歳を過ぎて、こんな形で「兄としての責任」を突きつけられるとは思ってもいませんでした。

2DKの部屋で孤独死をして特殊清掃の高額請求に合った部屋の様子
▲ 弟様が20年間暮らしていた2DKの室内。突然の悲劇によって時が止まった部屋に、追い打ちをかけるような過酷な現実が迫っていた。

せかされる不動産屋、294万円という見積書

弟が亡くなってから数日後、不動産屋から改めて連絡がありました。

「次の入居者の募集もありますので、できれば今月中に部屋を明け渡していただけると助かります。清鎖業者でしたら、うちが懇意にしているところをご紹介できますよ。手続きもスムーズですし。」

正直、あの時は「紹介してもらえるなら安心だ」と、それだけで少しほっとしてしまいました。土地勘もない茨城で、20年も弟が住んでいた部屋のことで、他に何を考える余裕もなかったのだと思います。今振り返れば、それが間違いの始まりでした。

紹介された業者が不動産会社へ出した見積書には、「294万円」という数字が記載されていました。特殊清掃の費用に加えて、フローリングの全面張り替え、壁紙(クロス)の全室交換、システムキッチンの入れ替え、浴室のユニットバス交換、床下の消毒工事……気づけば「リフォーム一式」という項目がずらりと並び、その合計がこの金額でした。

正直、自分には、その土地の相場感もよく分かりません。「これが普通なのだろうか」「2DKでこの金額は妥当なのだろうか」と、判断のしようがありませんでした。しかも不動産屋からは「早めに決めていただかないと、次の入居者募集に響いてしまうので」と、繰り返し急かされました。294万円という金額もさることながら、それをどうやって工面すればいいのかという不安の方が、正直大きかったです。弟が保険に入っていたことは知っていましたが、こんな高額な費用まで賄えるものなのか、見当もつきませんでした。

弟のことで頭がいっぱいなのに、慣れない土地で業者と不動産屋の関係まで疑わなければいけない。この年になって、たった一人で全部を背負わなければいけない状況に、正直かなり疲弊していました。

不動産会社が故意にしているという地元便利屋が作った孤独死の特殊清掃の見積書の実物
▲ 不動産屋のお抱え業者が実際に提示してきた見積書。特殊清掃とは無関係なリフォーム工事が上乗せされ、合計「2,949,980円」という巨額の請求が記されていた。

東京から駆けつけてくれた「まずは見せてほしい」の一言

そんな時、知人から勧められて連絡をしたのが、東京のToDo-Companyさんでした。茨城まで対応してもらえるのか半信半疑で電話をかけたのですが、電話口で、不動産屋から紹介された業者の見積書と294万円という金額の話をすると、担当の方は落ち着いた様子でこう言いました。

茨城でしたら対応可能です。まずは実際にお部屋を見せていただけますか。金額のお話は、それからで大丈夫です。294万円というのは、2DKの特殊清掃としては、かなり高い部類に入ると思います。それと、弟さんが保険に入っていらっしゃるとのことでしたら、その内容も一緒に確認させてください。使える保険があれば、費用の負担はかなり変わってきますので。」

数日後、担当の方は東京から茨城まで、わざわざ足を運んでくれました。地方の話だからと後回しにされることもなく、当たり前のように駆けつけてくれたことに、正直かなり驚きました。それまでのやり取りの中では感じられなかった安心感がありました。

現地調査の日、担当の方は部屋の状態を確認しながら、こう説明してくれました。

「フローリングは一度剥がして、下地のコンクリートまでしっかりバイオ洗浄します。臭いの原因はほとんどの場合、床材そのものよりも、その下のコンクリートに染み込んだ部分にあるんです。ここをきちんと洗浄・消毒すれば、臭いはかなりのレベルで取り切れます。」

システムキッチンやユニットバスの交換については、「今回のケースでは必要性が低いと思います」とはっきり言ってくれました。フローリングについても、全室張り替えではなく「洗浄後の状態を見た上で、念のため床材だけ張り替えておきましょう」という提案で、しかもその張替え作業は、地元から私が長年付き合いのあるリフォーム業者を手配して頼んだほうがいいと言ってもらえました。

保険申請まで、ほとんどお任せできた

そして何より助かったのが、保険の手続きでした。作業前後の部屋の状態を、担当の方が細かく写真に撮ってくれたのです。「保険会社に提出する際、作業前の状態がはっきり分かる写真が必要になりますので」と説明されながら、部屋の隅々まで記録してもらいました。正直、自分ではどこをどう撮ればいいのか、デジタルでの申請手続きなども全く分からなかったので、これだけでもかなり助かりました。

さらに驚いたのは、保険会社とのやり取りまで、担当の方が直接進めてくれたことです。証券番号を伝えると、保険会社の担当者と直接連絡を取り合い、必要な写真や作業報告書を先方に送ってくれました。私はというと、保険会社に電話をかけたのは最初の一度だけで、あとは「今、こういう状況です」という簡単な確認の連絡を受けるくらいでした。

「ご遺族の方は、ただでさえ手続きが多くて大変ですから。保険会社とのやり取りは、できる限りこちらで巻き取らせてください。」

そう言ってもらえた時、正直、涙が出そうになりました。葬儀や役所の手続きだけでも手一杯だったところに、保険の申請まで自分でやらなければいけないと思っていたので、その負担がなくなるだけで、気持ちがかなり楽になりました。

後日届いた見積書に記載されていた金額は、66万円でした。不動産屋から紹介された業者の294万円と比べると、実に4分の1以下です。しかもその 66万円についても、保険から給付を受けられることになり、実際に自分の懐から出す金額はごくわずかで済みました。同じ部屋を見ているはずなのに、なぜこれほどの差が出るのか。担当の方に聞くと、「向こうの見積もりは、必要ない工事まで、最初からすべて含めて計算されているのだと思います。私たちは、今の状態で本当に必要な作業だけをお見積りしていますし、保険が使える場合は、できる限りご負担を減らせるようにお手伝いしています」とのことでした。

東京から茨城まで、わざわざ来てくれて、しかも保険の手続きまで一緒に進めてくれる。地方から出てきて、右も左も分からなかった弟が20年過ごした部屋だということも汲み取ってくれた対応で、ようやく納得して任せられると思えました。

不動産屋からのプレッシャーについても相談すると、「明渡しのスケジュールについても、間に入ってお話しすることはできますよ」と言ってもらえたことで、一人で抱えていた肩の荷が、さらに軽くなったのを覚えています。

次は→第2話:25年の技術が挑む「完全脱臭」の現場

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