
みなさん、こんにちは。孤独死専門家の田中です。
今回は、私が担当した「糖尿病による低血糖が原因で昏睡状態に陥り、孤独死に至ってしまった」現場をもとに、皆さんにぜひ注意していただきたい点をお伝えすべく、監修いたしました。
一人暮らしの方が自宅で亡くなる「孤独死」の要因のひとつに、「糖尿病」が関係し、死後の発見が遅れてしまうケースがあります。
今回訪れた現場も、糖尿病の治療を続けていた故人の住まいでした。
孤独死に至る背景は人それぞれで異なりますが、病気を抱えながら一人で暮らし、誰にも気づかれないまま亡くなるケースは決して少なくありません。
糖尿病で亡くなっている部屋の死臭は甘いの?

「糖尿病で亡くなった方の部屋の死臭は甘いのか?」という点について、結論から言うと、必ずしも“甘いにおい”がするとは限りません。
■ なぜ「甘いにおい」と言われるのか?
糖尿病、特に重度の糖尿病や糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)の状態にある方は、体内でケトン体という物質が増加します。このケトン体の一部にはアセトン(除光液のようなにおい)が含まれ、呼気や体臭、尿から甘酸っぱいようなにおいを発することがあります。
そのため、「糖尿病=甘いにおいがする」という印象が一部で語られることがあります。
■ 実際の孤独死現場でのにおいは?
実際の特殊清掃の現場では、死因にかかわらず、遺体の腐敗によって発生する死臭が強くなります。これには以下のような複数の要素が含まれます:
- 腐敗ガス(アンモニア、硫化水素など)
- 体液のにおい
- 血液や排泄物のにおい
- 室内環境(気温・湿度・換気状態)
つまり、糖尿病で亡くなった場合でも、遺体が腐敗していれば他の死因と同様に強烈な腐敗臭が発生し、必ずしも「甘いにおいがする」とは言えません。
■ 専門家としての見解
清掃現場の経験を持つ立場から申し上げると、
糖尿病だから甘いにおいがする、というケースはごく一部であり、一般的ではありません。
むしろ、季節や発見までの日数、室内の換気状況の方が、においの強さや質に大きく影響します。
糖尿病ってどんな病気なのか?
糖尿病とは、簡単に言うと血糖値が高くなる病気です。
私たちが食べたり飲んだりしたものは、体内で消化されてブドウ糖という成分が作られます。ブドウ糖は、人間の体を動かすための重要なエネルギー源であり、血液によって全身の細胞に運ばれ、筋肉や臓器などで利用されます。
「血糖値」とは、その血液中にブドウ糖がどれくらい含まれているかを示す値のことです。
糖尿病になると、このブドウ糖がうまく細胞に取り込まれなくなり、血液中にあふれてしまうようになります。これは、インスリンというホルモンが不足したり、うまく働かなくなったりすることで起こります。
インスリンってなんですか?
ここでは、先ほど出てきた「インスリン」について、簡単に説明していきます。
インスリンは、体の中で唯一、血糖値を下げる働きをもつホルモンです。主に食後に分泌され、血糖値が急激に上がらないように調整する役割を担っています。
また、血液中のブドウ糖を体の細胞に送り届け、エネルギーとして使えるようにする働きもあります。さらに、使いきれなかったブドウ糖は、脂肪やグリコーゲンという形に変えて、体内にエネルギーとして蓄える仕組みもサポートしています。
インスリンは、ブドウ糖の量をコントロールする役割を担う存在と考えると、わかりやすいかもしれません。
しかし、インスリンが不足したり、うまく働かなくなると、ブドウ糖は細胞に取り込まれず、血液中に溜まってしまいます。すると、血糖値が上昇し、筋肉や内臓などに必要なエネルギーが届かず、全身がエネルギー不足の状態に陥ってしまいます。
糖尿病にはいくつかのタイプがあるのでチェックしておきたい。
糖尿病の種類について
糖尿病にはいくつかのタイプがあり、原因や発症時期によって分類されます。以下に代表的な種類をご紹介します。
■ 1型糖尿病
膵臓のβ(ベータ)細胞という、インスリンをつくる細胞が破壊され、体内のインスリンが極端に不足することで発症します。
子どものころに発症することが多いため、かつては「小児糖尿病」や「インスリン依存型糖尿病」とも呼ばれていました。インスリンの注射が生涯必要になることがほとんどです。
■ 2型糖尿病
インスリンの分泌量が不足する場合や、筋肉や肝臓などの細胞がインスリンの働きを感じにくくなる(インスリン抵抗性)ことで、ブドウ糖が細胞にうまく取り込まれず、血糖値が高くなるタイプです。
食生活や運動不足、肥満、過度な飲酒など、生活習慣が深く関係していることが多く、日本人の糖尿病の約95%以上がこの2型糖尿病です。
■ その他の特定の原因による糖尿病
遺伝子の異常や、肝臓・膵臓の病気、感染症、免疫の異常など、他の病気や要因によって発症する糖尿病もあります。
例えば、アルコールの過剰摂取による肝硬変や、特定の薬剤の副作用が原因になることもあります。これらは「二次性糖尿病」と呼ばれることもあります。
■ 妊娠糖尿病
妊娠中に初めて発見される糖尿病です。
母体のホルモンバランスの変化により血糖値が上昇しやすくなり、新生児に低血糖や呼吸障害などの合併症が出ることもあります。妊娠中に適切な管理を行うことで、出産後に正常に戻ることもありますが、その後の生活習慣にも注意が必要です。
糖尿病による孤独死の「最後の症状」とは
低血糖による死亡
● 合併症による死亡
● 急性膵炎による死亡
糖尿病が原因で亡くなる孤独死の現場では、最後の症状として「低血糖」が疑われるケースが少なくありません。
救急隊や医師による判断でも、低血糖状態に陥ったことで助けを呼ぶことができず、誰にも気づかれないまま死亡に至るケースが報告されています。
低血糖になると、めまい、ふるえ、けいれんなどの症状が現れ、やがて昏睡状態に至ります。症状が急激に進行するため、自分で助けを呼ぶ余裕もなくなり、周囲に気づかれないまま命を落としてしまうこともあります。
自宅で一人暮らしをしている場合、このような状態に陥っても、誰にも看取られることなく亡くなってしまう孤独死は、決して珍しいものではありません。
これは一見、信じがたい出来事のように思えるかもしれませんが、実際に起きている“現実”です。
低血糖は、時間が経てば自然に回復すると誤解している人もいますが、一度、血糖を調整する体の機能が失われてしまえば、外からのインスリン投与など適切な処置がなければ回復は望めません。
だからこそ、日頃から自分自身の体調の変化を観察し、違和感に早めに気づくことが重要です。特に一人暮らしの方や、糖尿病の治療中でインスリンを使用している方は、低血糖のリスクを軽視してはいけません。
糖尿病による低血糖は、命を落とす危険のある重大な症状です。
「甘く見る」と、取り返しのつかない結果を招くことになります。日頃から体調管理を怠らず、少しでも異変を感じたら、すぐに医療機関に相談することが何より大切です。
糖尿病の人は、どのくらいいるのでしょうか?
平成19年に実施された「国民健康・栄養調査」によると、
「糖尿病が強く疑われる人」がおよそ890万人、
「糖尿病の可能性を否定できない人」がおよそ1,320万人と推計されています。
この2つを合わせると、全国で約2,210万人が糖尿病もしくはその予備群であるとされており、日本人の約5人に1人が該当することになります。
さらに深刻なのは、糖尿病が強く疑われる人の約40%が、これまで一度も治療を受けたことがないという現実です。
糖尿病は、初期には自覚症状がほとんどなく、痛みも感じにくいため、
たとえ検査で「血糖値が高い」と指摘されたり、「治療が必要」と言われたりしても、
そのまま放置してしまう人が少なくありません。
しかし、治療を受けずに放置すれば、やがて深刻な合併症や命に関わるリスクに直面することになります。
だからこそ、「自覚症状がないから大丈夫」と思わずに、早めの受診と継続的な治療が大切です。
糖尿病で亡くなってしまう人は、どのくらいいるのですか?
糖尿病が原因で亡くなる方は、年間およそ1万4,000人とされています。
さらに、糖尿病そのものだけでなく、合併症を引き起こした結果として命に関わるケースも多く見られます。
たとえば、糖尿病による腎臓障害から人工透析が必要になる方は年間約1万5,000人、
視覚障害を発症する方は年間およそ3,000人と報告されています。
糖尿病を放置すると、さまざまな合併症が出始めるため、早めの対応と治療が非常に重要です。
糖尿病による主な合併症
以下は、糖尿病に関連して発症する主な合併症です。
- 脳梗塞
- 脳卒中
- 心筋梗塞
- 糖尿病腎症(★糖尿病三大合併症)
- 動脈硬化症
- 糖尿病神経障害(★)
- 感染症
- 皮膚の病気
- 糖尿病網膜症(★)
※「★」の付いた3つは「糖尿病三大合併症」と呼ばれ、特に糖尿病に特有の重大な合併症です。
● 糖尿病神経障害
合併症の中でも最も早く現れることが多いのが、この神経障害です。
主に手足の末梢神経に異常が起き、以下のような症状が見られます:
- 手足のしびれ
- ケガややけどの痛みに気づかない
- 筋肉の萎縮や筋力低下
- 胃腸の不調
- 立ちくらみ
- 発汗異常など、自律神経障害の症状
● 糖尿病網膜症
眼の奥にある網膜の血管が障害されることで、視力が低下します。
進行すると失明に至るケースもあり、注意が必要です。
また、糖尿病の方は白内障を併発することも少なくありません。
● 糖尿病腎症
腎臓で尿をつくる「糸球体(しきゅうたい)」と呼ばれる毛細血管が障害され、
尿がうまくつくられなくなります。進行すると人工透析が必要になります。
人工透析では、血液の不要な成分を機械でろ過し、体外で処理する必要があるため、
週に2~3回の通院が必要となり、日常生活に大きな制限が生じます。
現在では、人工透析の原因の第1位が糖尿病腎症であり、予防と早期治療が強く求められています。
糖尿病の予防法にはどのような方法があるのでしょうか?
糖尿病を予防するうえで、**最も重要なポイントのひとつが「肥満を防ぐこと」**です。
実際に、**平成14年に実施された「糖尿病実態調査」**でも、「過去に最も体重が重かった時期がある人ほど、糖尿病にかかるリスクが高い」という結果が明らかになっています。
肥満かどうかを判断する際には、**BMI(ボディ・マス・インデックス)**という指数が広く用いられています。
BMIは、身長と体重から算出される数値で、病気のリスクが最も少ない体重を統計的に割り出したものです。
■ BMIの算出方法
BMI = 体重(kg) ÷ 身長(m)の2乗
日本人の場合、BMIが22のときが「最も病気にかかりにくい」とされており、健康的な体重の目安とされています。
一方で、BMIが25以上になると「肥満」と判断され、糖尿病をはじめとした生活習慣病のリスクが高くなるため注意が必要です。
糖尿病予防の具体的な方法
- 適正体重の維持
→ 過度な体重増加を避け、BMI22前後を目指す。 - バランスのとれた食事
→ 高カロリー・高脂肪・高糖質の食事を控え、野菜・魚・大豆製品などを積極的に。 - 適度な運動の習慣化
→ ウォーキングや軽い筋トレなど、週3〜5回の有酸素運動が効果的。 - 飲酒・喫煙の見直し
→ 飲酒は適量を守り、禁煙に努める。 - 定期的な健康診断
→ 血糖値やHbA1cのチェックを怠らず、早期発見・早期対応を。
糖尿病は、生活習慣を見直すことで予防・改善が可能な病気です。
特に家族に糖尿病の方がいる場合や、体重が増加傾向にある方は、早めに対策を始めることが大切です。
糖尿病を防ぐための食事のポイント
糖尿病の予防には、食事のとり方を整えることが非常に重要です。以下の点を意識しましょう。
1. 野菜をたっぷりとる
野菜は食物繊維が豊富で、血糖値の急上昇を防ぎます。特に食事の最初に食べると効果的です。
2. 食事は決まった時間に、ゆっくりとる
毎日同じ時間に、よく噛んで時間をかけて食べることで、血糖のコントロールが安定しやすくなります。
3. 甘いものや脂っこいものは「少量ならOK」
完全に禁止ではなく、量を守って楽しむことが大切です。無理な制限より継続が重要です。
4. 大皿ではなく、取り分けて食べる
食べすぎを防ぐために、自分の分を一人分ずつ取り分ける習慣をつけましょう。
5. 薄味を心がける
塩分のとりすぎは高血圧にもつながります。だしや香辛料で工夫すると満足感もアップします。
6. 「ながら食べ」はやめる
テレビやスマホを見ながらの食事は、満腹感に気づかず食べ過ぎる原因になります。
7. 食べきれないときは無理せず残す
「もったいない」よりも「健康第一」。食べすぎない判断も大切です。
8. 調味料は直接かけず、つけて食べる
しょうゆやソースはつけて使うことで減塩につながります。
9. 食品のカロリー(エネルギー)を意識する
コンビニやスーパーの商品には表示があります。内容を見て選ぶ習慣をつけましょう。
糖尿病を防ぐための運動の工夫
日常生活の中で無理なく運動を取り入れることが、糖尿病予防に効果的です。
1. 外出時は少し早歩きを心がける
普段より少しだけ歩く速度を上げるだけでも運動効果が得られます。
2. 遠回りして歩く距離を増やす
目的地までの道を少し遠回りすることで、無理なく運動量を増やせます。
3. 買い物は歩いて、こまめに行く
まとめ買いを避けて、歩く回数を増やすのも有効です。
4. 3階くらいまでなら階段を使う
エレベーターを使わず、日常の中で「筋肉を使う」機会を増やしましょう。
5. 1日1万歩を目標に
スマホや万歩計を使って、歩数を意識することでモチベーション維持に役立ちます。
6. 週に1回は隣の駅まで歩く
目標のあるウォーキングは継続しやすく、運動習慣づくりに最適です。
7. テレビを見ながらストレッチ
ながら運動なら続けやすく、柔軟性や血流改善にも効果的です。
8. 泳げなくても水中ウォーキングを
水の抵抗を使った運動は関節に優しく、年齢問わず取り組めます。
糖尿病になったからといって、人生が終わってしまうわけではありません。
もしそうだとしたら、あまりにも切なすぎます。
今回、私たち遺品整理人は、糖尿病と闘いながら一人暮らしを続け、静かにお部屋で亡くなっていた故人のもとへお伺いしました。
糖尿病になったからといって、すぐに人生が終わってしまうわけではありませんし、
「いつ死んでもいい」と諦めてしまうような病気でもありません。
きちんと治療を受け、生活習慣を見直し、病気とうまく付き合っていけば、一般の方と変わらない日常を送ることは十分に可能です。
しかし、今回の故人は、日常的にお酒を過剰に摂取しており、
糖尿病の合併症を抱えたまま、誰にも看取られることなくひとり、最後のときを迎えられました。
まだお若い男性でした。
遠方から駆けつけた高齢のお母様は、
私たちに何度も、何度も息子さんの名前を呼び、
「もっと違う生き方ができたはず」と、まるで自分自身に語りかけるように、
その想いを静かに、けれど確かに伝えてくださいました。
伝えたいこと
糖尿病は、正しく向き合えばコントロールできる病気です。
ですが、放置したり、生活を見直さないままにすると、取り返しのつかない現実が待っていることもあります。
このような現場に立ち会う私たちだからこそ、
「命を大切にしてほしい」「後悔のないように生きてほしい」
そんな願いを込めて、皆さまにお伝えしたいと思います。

その異変は、バイクに乗っていたときに
息子さんのことを語ってくれたのは、お母様でした。
バイクが好きだった息子さんは、ある日、大型バイクに乗っていたときに体のだるさとめまいを感じ、意識がもうろうとするなかで走行を続けた結果、道路脇のガードレールに突っ込んでしまったそうです。
そのときの怪我は深刻で、一時は片足を切断する可能性があるほどの大事故でした。
幸いにも懸命な手術によって足は残りましたが、長期間のリハビリが必要となり、本人は回復よりも「死」を考えるほどの絶望感を抱えていたといいます。
事故の原因は、バイクに乗っている最中に起こした低血糖発作だったと後からわかったそうですが、当時の本人はそのことに気づけていなかったのかもしれません。
バイクは、彼にとって唯一のストレス発散だったのでしょう。
しかし、糖尿病という病気を抱える身では、自分の体調の変化と向き合いながら、「少し休む」ことの大切さを忘れてはならなかったのだと思います。
趣味を失うという喪失感
懸命なリハビリを経て、日常生活が少しずつ送れるようになった息子さん。
しかし、もうギア付きの大型バイクには乗れないと医師に言われ、代わりに選んだのはスクータータイプのバイクでした。
けれど、大型バイクのような「楽しさ」はそこにはなく、次第に気力を失っていったとお母様は話していました。
「うつ状態」になっていたのかもしれません。
母親に電話をかけてきては、
「いつ死んでもいいんだ、酒はやめられない」
と繰り返していたそうです。
生きる価値を見出せなくなっていた——そんな彼の苦しさが、今となっては深く心に残ります。
すべてを失ったように感じるとき
誰でも、落ち込んでしまうことはあると思います。
そんなときに、趣味や誰かとのつながりが、心の支えになることもあります。
けれど、もしその「楽しみ」すらも失ってしまったら——
人は、生きる意味さえ見失ってしまうことがあるのかもしれません。
「親としては、自分よりも長く生きてほしい」と願うものですが、
当事者が精神的に追い詰められてしまっている時には、その願いすら届かないこともあります。
だからこそ、複数の趣味や支えを持っておくこと、そして周囲がその心に早く気づいてあげることが大切です。
人は誰しも、常に強い心を持っているわけではありません。
息子さんが見つかった日
息子さんが発見されたのは、亡くなってから10日後のことでした。
何度連絡しても繋がらず、不安に思ったお母様が自ら部屋を訪れると、
そこには、口から血を流して亡くなっている息子さんの姿があったそうです。
糖尿病からくるうつ状態、そして低血糖の発作。
いくつもの不調が重なった結果だったのかもしれません。
お母様は、部屋の中で一つひとつ遺品を手に取りながら、
思い出話を静かに語り、形見分けを進めていきました。
ご自身もリウマチで足を痛めていたにもかかわらず、
私たちと一緒に遺品整理を行う姿は、今でも心に残る現場のひとつです。
遺された想い
もしかしたら、故人は**「いつか見つけてもらえること」を待っていた**のかもしれません。
あるいは、死を覚悟していたのかもしれません。
部屋には、必要最低限の家具と家電しか置かれておらず、
「いつ亡くなっても、迷惑をかけないように」と、あらかじめ整理されていたかのようでした。
そして、「なんか、できなかったかなぁ……」と繰り返していたのは、弟さんとお母様。
私たちは、その言葉を何度も聞きながら、
「この姿を、どこかで故人にも見ていてほしい」と願わずにはいられませんでした。