「溶けた遺体、孤独死」見るに堪えない特殊清掃現場の現実

2022年5月12日

誰にもみとられることのないひとりお部屋で亡くなった孤独死、助けを呼ぶ声ではなく最後に発見されるために虫と臭いで近所へ知らせた。遺体は警察が搬送するが何カ月も経過した遺体にはもうかたちはない白骨状態の遺体。

人間は孤独死をすると腐敗が始まります。組織がこわれ臓器も腐っていき換気扇などの隙間などからハエが入ってきて遺体に卵を産み付ける。ハエの孵化(ふ化)は早くわずか1日たらずで生まれ1週間もあれば成虫になってしまう。そのため発見が長引けば体中がウジだらけになってしまうこともある。

窓にはおびただしいほどのハエの大群

窓に群がるハエ

築40年ほどの鉄筋のアパート、3階の奥の部屋。

遺族からカギを預かりドアを開ける前に強烈な臭いのする部屋に入ってみたものは窓に群がるハエの大群だった。発見されるまで2カ月、室内はドアを開けた瞬間に新鮮な空気をめがけてハエが突撃してきた。鼻をつんざくような臭いがドアのポストから漏れ出していた。

部屋に入って殺虫剤をまきながら奥に進むと遺体跡と窓から逃げようとして体当たりをしたハエの大群が部屋中を縦横無尽に飛び回っている。玄関から窓のほうへ追い込みハエを駆除しなければ近隣へ飛んで行ってしまうので逃げないように機動力が求められる。

驚くことに、人間をたべて成長したハエは殺虫剤を散布されてもなかなか死なず飛べなくなったとしてもブンブンと威嚇のような音を立てる。一匹のハエならば音も気にならない程度だが何千匹となるとその音も気味が悪いものである。

室内を見渡すとハエのほかにウジが床を這い遺体跡近くの布団や洋服を持ち上げると無数のウジが目に入ってくる。思わずそれを見た時には吐き気を催してしまうがウジも殺虫剤程度では死なない。

窓際のハエ

部屋の主人が孤独死していて発見されるまでにまでには、漂ってくる臭いや窓の内側にはい回るハエで発見されることが多いので、ごくまれに玄関付近で亡くなった場合にはドアの隙間から共有の廊下にウジが這いでてくることもある。

何かあったときには「虫の知らせ」といわれるがそれも虫の知らせなのだろうか。

溶けたように見える遺体跡

どの程度の原状回復が必要になるのだろうか遺体跡を確認する。そこには警察が運び出していった遺体の後がくっきりと残っていてカラダから流れ出てしまった体液は遺体跡付近の床などにしみ込んでしまっている。故人が亡くなったのは座椅子の上、その座椅子は体液を十分に吸っていて座椅子とは思えないほどの重さを誇っている。

遺体跡には警察が引き上げるときにこぼれ落ちた肉片や床にへばりついてしまっている肉片が強烈に臭いを放っている。赤黒い血液の塊や黒くなった排泄物であろうものが防毒マスク越しでも鼻の奥を刺激するような気がして吐き気を催してしまう。

肉片は溶ける、そのように見えてしまうのは細胞組織が破壊してしまってブヨブヨの状態になり腕や足、胴回りなどの肉片が骨から削げ落ちてしまうことで溶けるような感覚になると思う。生きているときは筋肉の組織が働いているので落ちるようなことはない、人間は亡くなれば筋肉が緩み穴という穴も広がってしまう。

臭いに関しては腐敗は進行しているため肉片や体液を掃除しなければ臭いがおさまることはない。むしろ、部屋中に臭いをハエがまき散らしてしまったりするのでカーテンなどで足を拭いたりして腐敗臭は広がっていく。

部屋の様子

そもそも死臭とはどんなものか

家屋内で腐敗していた場合、発酵しすぎたチーズ、生ごみの腐った臭いに近い。水中で腐敗した場合はドブのヘドロの臭いが想像をはるかに超えて鼻の中に入ってくる。そして5分もしないうちに嘔吐したり、着ている衣類や頭髪に臭いが付着してしまう。

いままで嗅いだことのない臭いを嗅いだ脳はしばらくその臭いを忘れることはない。1度2度、風呂に入りカラダを洗っただけでは臭いが取れた気がしない。それは脳がびっくりしている状態で緊張がほぐれた瞬間などに記憶によって臭いを呼び起こしてくるようになる。

もちろん、窓を開けてしまえば隣人が干している洗濯物などに臭いが付着してしまって隣人から苦情を言われることもある。遺族は悲しい気持ちでいるが、付き合いのない隣人にとっては特別な感情はない。

誰にも看取られることなく人が亡くなって腐敗し放つ臭いはどうやって発生するものなのか?

体内の微生物が、宿主の体を崩壊させつつ放つ物質とのこと。体内の微生物・・・動物の体は微生物と共存共栄していて細胞が死んだときにバランスが取れなくなり臭いというものに代わっていきます。

アンモニア、インドール、スカトール、硫化水素、揮発性アミン、メルカプタン、脂肪酸、酪酸、吉草酸、プトレシン、カダベリン、プロピオン酸…

上記にあげた中で最もなのが、酪酸は完全に死臭です。酪酸菌とは、酪酸菌は糖を発酵して酪酸を生成する菌の名前で、炭水化物を分解し多くの酪酸を生成いたします。

酪酸菌とは、酪酸菌は糖を発酵して酪酸を生成する菌の名前で、炭水化物を分解し多くの酪酸を生成いたします。地球上のあらゆる動物の消化器官の中には常に存在する菌になっていて腸内のバランスを保つ働きをしています。酪酸菌は100℃にも耐えうる胞子を形成していて、強酸や強アルカリ・乾燥などの厳しい条件下では活動を休止したり環境が良くなればまた生成を開始したりするので腸内にいきたまま届けているのです。また、ビフィズス菌や乳酸菌の発育を助け動物にとって必要なエネルギー源となる有機酸を生成します。簡単にいうと、酪酸菌は食物繊維を食べてその代わりに酪酸を作るということになります。

床下にも体液が流れる

床下に体液が流れる

溶けた遺体、一通り遺品整理が終わると床などに流れ出てしまった体液を洗浄する必要がある。しかし長期間にもなると固まっていたり、床の継ぎ目からその下へ流れて行ってしまう。カラダから出たばかりの血液は鮮血なので水のように流れて隙間から重力に逆らわず下へ流れていきます。床下の板は脂を含んだ体液で乾くこともなくただただ臭いを発し続けます。洗浄しても木に含まれた体液はあく抜きなどをほどこさなくてはならない場合もありますが交換してしまったほうが後々の臭い問題は解消されると思います。

床板を外してみると床板を貼り付けるための根太がありますが根太にまで体液が染み込んでしまっていると床板全体を張り替えるような事もあるので染み込まないように早めに孤独死を発見する方がいろいろとよろしいかと思う。

孤独死が発生してしまうと遺族だけではなく大家さんも悩む日々が続く。大家さんに寄せられる一つに「隣人からの苦情」がある。長期間発見されなかった場合には腐敗状態が激しく血縁関係を調べるためにDNA鑑定をするときがあるが、夏場の孤独死が多い時期には観察医務院も追いつかなくなりしばらくは遺体を冷蔵しておく事もある。できるだけ優先的にやってもらいたいのは遺族も大家も歯痒いところではある。遺族にとってはDNA鑑定待ちの場合冷蔵庫代が1日9000円の費用がかかってくるので1ヶ月ものあいだ待たされてしまえば31日×9000円となる。大家さんはその間臭いの苦情で対応することになるが日数が経過するごとに隣人のフラストレーションは溜まっていき、何も言わず引っ越してしまう事も現実だ。

警察が他殺の有無を調べ部屋への入室許可を出すにしても日数が掛かるのでその間にも隣人からの苦情は大家さんにぶつけられることになる。

遺族と大家のトラブルは初動でどのくらい連絡を取り合っているかで隣人からの苦情にも答えることができるため大家さんが他の家賃収入を失う心配もなくなってくる。早くに入室許可が出れば最低限の特殊清掃とリフォームで住むために部屋を早く直して次の借主に事情を説明して住むことになるだろう。

孤独死になりそうな人の特徴(独自の知見)

  • 糖尿病を患っている、成人病疾患を患っている人
  • 独居で認知症を発症している人
  • セルフネグレクト状態の人

糖尿病を患い成人病疾患を患っている人

糖尿病予備軍と呼ばれる人は生活の欧米化に伴い、日本では6人に1人が糖尿病の予備軍となっています。糖尿病が原因で死亡するのではなく「糖尿病を患っていて合併症で死亡する」ことが少なくありません。ひとりで暮らしていると低血糖に陥った際に誰にも助けを呼べなければそのまま昏睡状態になってしまう。

独居で認知症を発症した高齢者

認知症を発症してしまうと物忘れがひどくなっていってしまい、同じものを何個でも購入したり当たり前にできていたことが極度にできなくなったり、空間が開いているとそこに何かを埋めようとして詰めていきます。部屋はごみ屋敷状態というより「物屋敷」という印象を受ける。ごみ屋敷も物屋敷も生活品が多いことには変わりがないが問題は暮らしていて転んでケガをしてしまうこと。高齢になって骨折などをしてしまえば完治することが難しくなりだんだんと気持ちも落ち込んでいってしまい誰にも会いたくなくなってしまうこともある。

セルフネグレクト状態の人

ここでいうセルフネグレクトは、何にもやる気がないのではなく男性であればいままで現役で一生懸命家庭を支えるために仕事だけをしてきて現役を引退した後に趣味が持てないことや妻が先立ったことで料理ができないことだ。食事はレトルト中心になり偏った栄養で過ごすようになる。自分の好きな食べ物だけが部屋に置いてあることが多いため高血圧など習慣病などを発症し発作などによって最期を迎えてしまうといった兆候が見られる。

1日に孤独死で何人くらいが亡くなっているか

孤独死した室内

国土交通省の孤独死に関する統計データから東京都で発生した孤独死は増加傾向にあり2018年では5513人が年間で孤独死として発見されている、1日にすると14人~15人が孤独死で東京都内で発見されているということになる。

孤独死のデータ

発見される場所は特徴があるわけでもない、いつだれが発作などによって死亡し誰にも発見されないで臭いを放つまで放置されるかだ。決して他人事ではなく孤独死というのはもうすでに身近でおきている新しい形の死に方なのだろう。

いちばん特殊清掃をしていて辛いのは

最長で3年という間発見されなかった孤独死の案件があった。その時はどんな様子になっているのかドアを開ける瞬間まで緊張して手が震えていた。

原因は海外への出張で日本に帰ってくることができなかったことによる発見までの長期化だったが、助けや発見を待つ故人はどんな感じだったのだろうと考えると自分の感情が複雑化してきて言葉を失う感じだった。ドアを恐る恐るあけ臭いを確認しながら虫が外に出ないように足を奥の部屋へ進める。発見まで3年、そこでみた遺体跡は、カラダをすべて食べつくされ乾燥し骨だけになった遺体の跡だった。

遺体を食べた虫も3年の月日は生きることがなく部屋中に生涯を終え落ちている、まるで黒いジュータンが敷かれてあるようにサナギ状態のものもあれば成虫になって姿かたちそのものが残っている状態であるが長靴の靴底で感じるのはプチプチという感触ではなくザクザクとした乾燥したものを踏んでいる感触だ。

タタミの上で亡くなっていたのだがタタミの上に黒いジュータンが敷かれるように見えた部屋、なぜこんなになるまで発見されないのだろうか、隣人も気付いていたはずではないのだろうかという懸念があった。

しかし、日本の建築はすばらしい技術の進化でドアを閉めれば外からは何が起きているかわからないほどの密閉技術がこのようなときにあだとなってしまうこともある。2重のロック、ドアの頑丈さがあれば簡単にはドアも開かない、入れるようにするには窓ガラスを割って中に入るしかないが窓ガラスも2重の頑丈なガラスではハンマー1本ではなかなか入れない。

入ったころには、3年という月日が流れてしまった「白骨死体」が出迎える。

それともやっと発見してくれた、ということだろうか。肉片も乾燥して繊維のようになってしまっているように見える、人が亡くなった後の特殊清掃で最もつらいのは発見されないこと。

逆算して考えると早く発見されれば最後の顔を見れたであろう、少しでも自分の中で発見したという納得も付けられるだろう。海外で活躍してきて帰ってきて仕事ぶりを親に報告しようとしたら白骨していたという現実はなかったんじゃないかと。

死臭というのは普段生活しているうえで嗅いだことのない臭いです、もしも異臭を感じたならばすぐに警察に通報することで代わりに確認する手段をとってくれるでしょう。しかし、近隣さえ気づかずに通報もせずに暮らしていたら白骨化した遺体が隣にいるわけですからそうならないようにするためにも通報はとても大事なことです。

「早くに発見してほしい」それが故人も特殊清掃員もおもうことです。

死はいつか訪れます、いつ、だれが、孤独死をしてしまうかわかりません。そうなったときに近隣で早期発見できるように地域づくりをしておくことも必要になってきます。遺族だけではひとり暮らしの見守りをするのは難しいと思いますが誰でも歳をとり、当たり前にできていたことができなくなります。そうなったときに助け合いができる地域、孤独死しても発見できる地域になっていくことが生涯を過ごしていくうえで安心な地域づくりだと思っています。

むかしから孤独死は起きていたのですが人口が増え目が行き届かなくなった現代で長期の発見されない孤独死が増えてきました。時代はまるで鏡のように今起きている日本の本当の姿を映し出しているように感じています。

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