まず、これだけはお伝えさせてください。
「自分で確認したい」「最後にもう一度、そばにいたい」その気持ちは、とても大切なものだと思います。でも、現場はご遺族の方にとって、体にも心にも大きな負担がかかる場所です。できれば私たちに任せていただきたいのですが、どうしても立ち会いたいという方のために、必ず揃えていただきたいものをお伝えします。
これは「大げさな装備」ではありません。あなた自身を守るために、本当に必要なものです。
現場に入る前に揃えてほしい装備リスト
① ビニールキャップ
髪の毛への臭いの付着・汚染を防ぎます。使い捨てのシャワーキャップで構いません。100円ショップでも購入できます。
② 不織布マスク + 鼻栓
マスクだけでは腐敗臭を完全にはブロックできません。鼻栓を重ねて使用することで、においによる強いショックを和らげることができます。においは、記憶にも深く刻まれます。心を守るためにも大切な備えです。
③ 耳栓
ハエの羽音は、想像以上に精神的なダメージを与えます。音を遮断することで、少し冷静さを保つことができます。使い捨ての耳栓で十分です。
④ ビニール手袋(使い捨て)
現場内では、何にも素手で触れないことが基本です。二重にして着用するとより安全です。作業が終わったら、その場で裏返しながら外し、すぐに廃棄してください。
⑤ フード付きレインコート
体全体を覆い、衣類への付着・汚染を防ぎます。使い捨てタイプが理想ですが、捨ててもよいと思えるものを着用してください。フードを必ず被ってから入室してください。
⑥ 使い捨て可能な衣類(レインコートの下に着るもの)
現場を出た後、その場で脱いで袋に入れ、そのまま処分できる衣類を選んでください。においは繊維に強く染み込みます。大切な衣類は絶対に着て行かないでください。
⑦ 長靴(または防水性の高い靴)
床に体液が広がっている場合があります。現場専用として割り切れる長靴が最適です。現場から出た後は、靴底も含めて除菌してください。
⑧ 害虫駆除スプレー
扉を開けた瞬間に、室内で繁殖しているハエなどの害虫が外へ飛び出すのを防ぎます。入室直後の防衛策として必須です。
現場に入る前に、もう一つだけ心構えを
装備を揃えていただいても、においや光景が心に与える衝撃は、完全には防げません。もし現場に入って気分が悪くなったら、すぐに外に出てください。無理をする必要は、まったくありません。
現場を出た後のこと、帰り道についても知っておいてください
大切な人のそばに向き合い、精一杯やりきった後の帰り道。その疲れた体で電車に乗るとき、もう一つだけ気にかけていただきたいことがあります。
臭いは、自分では気づきにくいのです。
腐敗臭の中に長くいると、人間の嗅覚はその臭いに慣れてしまいます。「もう大丈夫かな」と感じていても、衣類・髪・靴には、気づかないうちに強い臭いが染み込んでいることがあります。
電車の中で、隣に座った方が顔をしかめる。そっと席を立つ。場合によっては、「臭い」と声に出して言われてしまうこともあるかもしれません。悲しみの中でそんな言葉をぶつけられたら口論になってしまうことも、無理のないことです。
底知れぬ悲しみの中でそんな言葉をぶつけられたら、深く傷ついてしまうのは当然のことです。でも、そうなってしまったら、ご遺族様がさらに深く傷つきます。
それは、ご遺族様が悪いのでも、相手が悪いのでもありません。準備が間に合わなかっただけのことです。だからこそ、帰り道のことを事前に知っておいてほしいのです。
現場を出る前・帰宅するまでに気をつけていただきたいこと
現場を出る前に
レインコート・使い捨て衣類は、現場の外で脱いで、ビニール袋に密封してから捨てます。長靴・靴底は除菌スプレーをかけてから袋へ。マスク・手袋・耳栓・ビニールキャップもすべてその場で処分してください。
帰宅の手段について
できれば、公共交通機関は使わないことをお勧めします。自家用車かタクシーを使い、窓を開けて帰ることが最善です。どうしても電車を使う場合は、着替えを一式持参し、現場近くのコンビニやトイレで全身着替えてから乗車してください。それだけで、見知らぬ人との不必要なすれ違いを防ぐことができます。
髪と肌について
臭いは髪にも皮膚にも吸着します。帰宅後はすぐにシャワーを浴び、シャンプーを2〜3回繰り返してください。
着ていた衣類について
通常の洗濯では腐敗臭が落ちきらないことがあります。帰宅後すぐにビニール袋へ密封し、単独で洗うか、思い切って処分することをお勧めします。
最後に:無理をせず、いつでも私たちを頼ってください
もし誰かに何か言われそうになっても、その場で言い返す必要はありません。ご遺族様は今日、誰よりも大変な場所に行ってきた人です。その事実は、誰に何を言われても変わりません。
口論になりそうな場面を作らないための準備を、私たちと一緒にしていきましょう。無理をする必要は、まったくありません。私たちがそこにいます。あなたの代わりに、責任を持って向き合います。
